こんにちは。パロアルトインサイトCEO石角友愛です。
常日頃新しい情報ばかり追い続けているとふと時代の流れと逆を行く様な、クラシックと言われる古典書が読みたくなるときもあります。
20年以上前に書かれたマーケティング業界の古典書、
『ポジショニング戦略』(アルライズ&ジャックトラウト著)
を読んでみて感じたことを書き留めます。出てくる企業などは今とは全く扱いが違うところに時代の流れを感じますが、本質は変わりません。
アメリゴベスプッチ vs クリストファーコロンブスの話
小学生でも知っているコロンブス。彼はアメリカ大陸の発見者の割に努力に見合う評価を受けず、最後は獄中死するという人生を過ごしました。それに引き換え、コロンブスより5年遅れでアメリカに到達したアメリゴベスプッチは、その努力と功績が評価され、存命中にスペイン王国にカスティーリャの市民権を与えられ、要職につくことができました。そして、ヨーロッパ人はアメリゴこそが新大陸の発見者だと信じ、その名にちなんで新大陸を『アメリカ』と名付けたのです。
なぜ、2番手のアメリゴの方が存命中に正当な評価を受けたのか?
コロンバスがやらなくて、アメリゴベスプッチがやったこととは?
『新世界』をアジアとかけ離れた別の大陸であると明確にポジショニングし、当時の地理学に革命的貢献をもたらした。
自分の発見と主張を明確に記録し、公開中の書簡をまとめた『新世界』はなんと25年間で40ヶ国語にも翻訳された。
そう、コロンバスはベスプッチと比べると出版などで自分の主張や偉業を明確に世間に伝えなかったのです。そのせいで、ドイツの製図家(地図を作る人)がコロンバスのことを知らずに、ベスプッチの書籍だけを読んで、
新大陸に彼の名前を書いたのが、アメリカの由来とされています。
マーケティング戦略においてここから言えることは何か?
①『〇〇ではない』ポジショニングの強み
ベスプッチは、新大陸がアジアとは全く違うものだということを明確に主張しました。新商品や新サービスを打ち出すとき、必ず既存商品に対抗する形で打ち出さないといけない。人はすでにあるものと関連づけられていない限り、新しいものを受け入れないので、連想のし易さ、すでにある人々のスキームへの入り込み易さを考慮しても、『アスピリンじゃなくてタイレノール』『コークじゃなくてペプシ』などのポジショニングは効果的なのです。
②アウトプットの大事さ
私の中では『マラドーナ戦法』と読んでいるものです。ゴールが入ったかどうかあやふやだったらさきに『やったー!!!』と大喜びして走り回って会場を味方につける。それと同じで、ペスプッチもたくさんの書簡という形で(自分で書いてはいなかったようですが)自分の考えを形に残しました。それにより、確固たるポジショニングを得た、というわけです。
スタートアップをやるときに、シリコンバレーでは必ず起業家が読む本の一つが
Steve Blankの “4 Steps to the Epiphany” ですが、そこでも、既存商品や既存ニーズが存在しない、全く新しい市場を開拓するのは一番難しいと書かれています。しかし、上手くいけばゲームチェンジャーになれる可能性も秘めています。(AirBnBなどがその例)
弊社はスタートアップ企業より、大企業で『AI技術を活用して新しくどの領域に参入すべきか』という案件に関わることが多いですが、そのときもポジショニング戦略の視点は役に立つなと感じました。
何回読んだかわからない、プロダクト開発をしている人、スタートアップをやっている人、新商品を世に送り出したい人オススメの良書。技術やアイデアが先行しがちなプロダクト開発ですが、一番大事なのはカスタマー開発だ、という概念を教えてくれました。また今度読もう。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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