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米アマゾンらが経済学者を雇う理由 – マネー現代 寄稿

2018/11/16 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

米アマゾンらが経済学者を雇う理由 – マネー現代 寄稿

米アマゾンらが経済学者を雇う理由~デジタル経済学者のシェアエコ化

こんにちは。パロアルトインサイトCEO兼AIビジネスデザイナーの石角友愛です。

前回、行動経済学とAIを融合した新しいスタートアップについて書いたところ(『いまシリコンバレーで「AI(人工知能)×行動経済学」が最強なワケ』)、たくさんの反響がありました。

そこで今回はスタートアップではなく、アマゾンやマイクロソフト、グーグル、Uber、 Airbnbなどのテック大手が経済学者をこぞって獲得する争奪戦について書きます。

米アマゾンで活躍する「150人の経済学者たち」

アマゾンのチーフエコノミストはPat Bajariというワシントン大学で教授をしている経済学者です。

彼のもと150人ほどの経済学者(または経済学の博士号を持つ人)をアマゾンは抱えているとハーバードビジネススクールの記事にありました。

中には大学院を卒業したてのルーキーエコノミストを青田刈りするケースもあります。このようにIT企業で経済学の知見を生かして働く経済学の専門家を、「デジタル経済学者」「テック経済学者」と呼びます。

それではこの「デジタル経済学者」は具体的にアマゾンやグーグル、ウーバーで何をしているのでしょうか。

その共通点は、事業のデザイン設計とデータ解析です。

たとえば、「広告事業」。Amazonやグーグルなどの多くのIT大手がオークションベースの広告プラットフォームを持っていますが、そのオークションシステムのデザインをデジタル経済学者が担当することが多いのです。

またデジタルマーケティングとして広告を配信する側でもデジタル経済学者の知見が生かされます。データ解析をしながらそれぞれのチャネルでのROAS最適化などの予測をします。

売り手と買い手をつなぐ、求職者と企業をつなぐなどの「マーケットプレイス事業」でも、デジタル経済学者たちは活躍しています。

例えば、売り手の商品をどんな順番にランク付けするかというインセンティブ作りの課題や、ユーザーの短期的行動を理解した上でマーケットプレイス全体の均衡状態をどう保つかなどのデザインを行います。

Amazonの場合、商品を売りたい事業者がマーケットプレースとしてAmazon上で販売していますが、その時にどうやったら自分の商品が一番上にランクされるかという課題が売り手の悩みなのですが、そのインセンティブ作りの裏には経済学者の頭脳が生かされていたのです。

ウーバーの「値段戦略」に貢献するデジタル経済学者

それだけではありません。

たとえば、「評価経済デザイン事業」もまたデジタル経済学者たちは活躍の舞台となっています。

ユーザーからのレビューやコメントがサイトの重要なコンテンツになっている場合(例:Amazon、トリップアドバイザー、日本では食べログなど)、コメントの際にどんなバイアスが起こりやすいかをデジタル経済学者は理解し、そのバイアスを最小限にするためのシステムデザインを行います。

デジタル経済学者は「値段戦略」でも重要な役割を果たします。

実際、ウーバーは通勤時間などの需要が供給量をはるかに超える時間帯ではダイナミックプライシングと言って値段を動的に変えていますが、その値段戦略にもデジタル経済学者が貢献していると言われています。たとえば、ここまで値段をあげたら均衡状態が崩壊する、というようなシミュレータがあったら便利だと思います。

スティーブ・バルマーが信頼したハーバード大教授

ここで面白いのが、経済学者たちは大学に籍を置きながら、IT企業に対して貢献をしているということです。

たとえば、マイクロソフトの元CEOであるスティーブ・バルマー氏に信頼され、マイクロソフトのオンライン広告事業でチーフエコノミストとして活躍したSusan Athey教授は当時ハーバード大学で経済学を教えながら、年に2回大学を休職しマイクロソフトでフルタイムで働いていたそうです。

こうすることで、教授は研究をつづけ論文発表を行いながら、自分たちの幅広い知見を、会社特有の課題に生かすことができます。

また、会社特有の課題を解決する過程でアカデミアにいるだけでは見えづらい業界や現場の理解をすることが出来ます。

多くの経済学者がビジネススクールなどの大学院で教鞭をふるっているため、社会経験のある生徒に本当に役に立つ授業をするためにも、そのような経験は生かされるのです。これからの未来は、このようなデジタル経済学者がシェアリングエコノミー化して、色々な企業の課題解決に貢献するようになると思われます。

アカデミアと産業界の「真のコラボレーション」

私は日々AI技術を日本企業に導入するパロアルトインサイトのCEOとして言っているのですが、AI導入は労働集約型モデルでは成り立ちません。

なぜなら、データサイエンティストなどのAI開発をする人の作業内容に個人間の大きな質の差があり、その差が下手をすると何億円以上の差を生んでしまうからです。ある一定レベルの労働力を大量に抱えてなりたつ仕事ではないからです。

今後、データ活用の中で機械学習の専門家だけではなく、デジタル経済学者の需要ももっと増すでしょう。

最高レベルの知識を持つ専門家を集約して色々な企業にその知見を提供する、知識集約型モデルの集大成として、上記のようなアカデミアと産業界の真のコラボレーションが生まれることを私は期待しています。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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