日経クロストレンド 連載第6回「“8チャン”での犯行声明とCDN企業のIPO その意外な関係」寄稿記事 掲載
2000万社以上のウェブサイトに、パフォーマンスとセキュリティーを提供する米クラウドフレアはサンフランシスコに本社を置くCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービス大手だ。近いうちにIPOをするため、S-1(新規株式公開をする会社が提出する証券登録届け出書)を8月上旬にSECに提出したことで、話題になっている。
同社を2009年に立ち上げたのは、筆者のハーバードビジネススクール時代の一学年上の先輩。そのIPOは、日本では大きく取り上げられることはないかもしれない。
だが、テック系と名乗りながらも、実態はIT企業運営とはほど遠い会社が、本来の企業価値以上に価格がつり上げられてしまう最近の風潮に嫌気がさしていた投資家などからは、「本当のテック企業のIPO」として注目されている。
そんなクラウドフレアが、投資家以外からも注目を集める出来事が、最近あった。(ネット掲示板の)「8チャン」へのサービス提供の中止を表明したのだ。きっかけは、8月3日にテキサス州エルパソ市で起きた銃乱射事件の犯人が、犯行直前に犯行声明を8チャンに投稿していたこと。この(サービス提供中止の)是非については今も議論が続いている。
8チャンことインフィニティチャンネルは、フレドリック・ブレナンという1人の男性が、「フリー・スピーチ・ユートピア(言論の自由の理想郷)」を掲げて13年に立ち上げたもの。しかし実際は暴力的、差別的コンテンツがサイト内にまん延。19年3月に起きたニュージーランド・クライストチャーチでの銃乱射事件の犯人も犯行声明を投稿していたことで知られる。こうした経緯もありブレナン氏も、エルパソ事件に関するニューヨーク・タイムズの取材に対し、「今すぐ8チャンを閉じるべきだ」と答えている。
クラウドフレアのCEOであるマット・プリンス氏は、「悪意のあるサイトがクラウドフレアのネットワークから消えても、インターネットから消えることはない」とブログで述べている。米CNNは、サイト運営会社が問題のあるコンテンツを削除しない場合は、サービスプロバイダーやCDNプロバイダー、ソーシャルメディアプラットフォームなどがサービスを拒否する意思決定をすべきだ、と報じた。
インフラを提供するクラウドフレアのような会社が特定の会社へのサービスを停止すること自体は、非中央集権型のインターネットという世界では、矛盾する行為とも受け取れる。S-1の中でクラウドフレアは、会社が抱えるリスク要因として、前記のような事例が「重大な政治的、ビジネス的、評判的な悪影響」を及ぼす可能性があると述べている。
しかし、リバタリアニズムに基づく「言論の自由の保護」という米国社会の根底にある理念は、クラウドフレアのように売り上げの半分以上が米国外から来る会社には当てはまらないと、プリンスCEOは述べている。今後は、国境を越えた会社のルールづくりとそれを貫く企業体制が、より必要になるのではないか。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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