日経クロストレンド　第７回「Stripe、Airbnbだけじゃない　超著名VCが注目のスタートアップ」寄稿記事　掲載

2019年10月2日、米国シリコンバレーの超優良インキュベーターであるY Combinatorがスタートアップの「トップ企業」の一覧を発表した。彼らによると、「求職者、ビジネスパートナー、投資家がより多くのYC（が支援している）企業を知ることができるように作成した」という。リストは、企業価値のバリュエーション（評価）がベースになっている。

トップ10には、StripeとAirbnbの超巨大ユニコーンが入っている。Stripeの企業価値は350億ドルという驚異的な額で、つい最近、2億5000万ドルの資金調達を終えたばかりである。パロアルトインサイトでも決済のためにStripeのシステムを導入しているが、同社の強みはAPI（アプリケーション・プログラミング・インタフェース）の使いやすさ。どんな言語を使っていても、決済システムを簡単に導入でき、クレジットカード情報など機密性の高い情報の取り扱いを、Stripeにすべて任せることができる。

Stripeは決済システムをサービスとして提供するだけではなく、さまざまな投資活動にも積極的だ。プログラミング学校のLambda Schoolや子供向けにクレカを発行するサービスを提供するステップに投資している。

2020年に迫るAirbnbのIPO、結果が見もの

トップ10のうち、従来の意味でエグジットしている企業は自動運転のCruiseと、クラウドファイル管理のDropboxの2社のみ。残りの8社はまだプライベート企業である。これからどのようなエグジットが起きるか、注目している。特にAirbnbは2020年のIPO（新規上場）を目指しているので、現在のプライベートマーケットでの310億ドルのバリュエーションがパブリックマーケットでも通用するのか、見ものである。

Stripeのように開発者に使いやすいAPIを提供することで、他のスタートアップがサービスを活用し、スタートアップのエコシステムが伸びれば売り上げも伸びるという構図のビジネスがYCの企業には多い。私の友人も勤めているが、チャットエンジンをAPI化しているSendBirdなどのスタートアップは、まさにその例である。

Gustoの人事プラットフォームは開発には直接関係はしていないが、スタートアップが人事を丸ごとアウトソースできるシステムとして、経営者から評価が高い。米国では健康保険を企業が提供するが、健康保険や勤怠管理などのサービスも提供されているため、雇用主としてはありがたい。スタートアップに雇用される側の従業員にとっても、福利厚生が手厚くなるため有益である。

YCの出資を受けた企業は、それまでのYC卒業生名簿に追加され、自社のサービスを他のYC企業に展開するためのパイプラインにもつながる。

ソフトやSaaS系の企業が圧倒的に多いが、Boom Supersonicのように音速の飛行機の開発などを手掛ける企業もあり、ハード面、製造面での技術革新が今後は期待される。