4日目は脳科学者による招待講演と、いくつかの論文のポスターセッションをまわりました。初日にポスターセッションを回った感想としては、すべてのポスターを吟味することは不可能という結論に至りました。定員目一杯の人数が蠢く会場の中で、200近いポスターが展示されており、それぞれのポスターで10人程度相手に研究者が質疑応答している光景を思い浮かべてください。まるで昼時の東京駅で駅弁の買い物をするようなイメージです。ただし、幕の内弁当の代わりに、カルバックライブレラーダイバージェンスだの、ホライズンの呪いだのの技術用語が飛び回る、かなり異様な光景です。
なので、なんの戦略もなしにポスター会場に飛び込むのは少し無謀です。私がたどり着いた戦略は2通りあります。まずは、会場が開く予定の時間の10分前くらいにシレッと立ち寄って、ポスターの準備をしている段階で会場で話を聞くということと、混み始めたらさっさと退散して夕飯を食べに行きます。夕飯をゆっくりと食べ終わって6時40分くらいにまた戻ります。その時間には皆腹を減らせて帰っている最中です。その隙にまた目星を付けていたポスターのところに戻ります。
今日マークしていた論文は「ObjectNet」で、ポスター会場に着くや否やまずそのポスターに直行しました。「ImageNet」はFeifei Li教授が作った、画像処理系の機械学習のデータで、ディープラーニングの研究で頻繁に使われるデータセットとして有名です。今回見たオブジェクトネットは、イメージネットの画像と全く同じ物体を、少し回転させたり背景を変えたりしたものを集めています。
見て分かる通り、少し意地悪なものもありますが、彼らの発見は、このデータで評価すると最先端と言われるディープラーニングのモデルの精度が40%以上落ちるということで、以下にこれまでに見たことがないデータに対してディープラーニングがまだ弱いことを証明しています。
どのようにこのデータを集めたかというと、データ収集専用のアプリを開発してアマゾンのメカニカルタークサービスを活用してデータをクラウドソーシングし、それらのデータをレビューしてデータセットに加えているようです。
物体別の精度を見ると面白くて、物体によって精度のバラツキが明確に現れています。例えば皿などの物体は難しいとされています。
もう一つ面白かった論文は「This Looks Like That: Deep Learning for Interpretable Image Recognition」(Chen, et al 2019)です。これXAIの流れで、どこに注目して機械学習のモデルが物体認識をしているかというものです。アテンションとは少し違ったメカニズムとして「プロトタイプ」という概念を使っています。例えば鳥の羽の形や、足の部分などの画像の枠に対応させることができ、「これらのプロトタイプがあるからこのように認識している」という因果関係を明確にできます。
他にも強化学習のPOMDPを解決する方法や、そもそもデータのバランスがとれていないときに活用する手法などがありました。これらの課題は実世界でぶち当たることが多いのでとても参考になりました。
以上で今年のNeurIPSシリーズを終わりにします。全体としてかなり刺激的で、いろんな学びと多くの人と話せたので大満足です。また来年も来たいと思います!
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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