2019年2月5日にアマゾンジャパンのAWS Loft Tokyoで開催されたAWS Nyantech ~Deploy Cat Friendly World(Nyantechセミナー)に参加してきました。
■ 猫×AI
このセミナーへの参加条件の一つは「おねこさまへの愛が溢れすぎて、その愛を「挑戦としてカタチにしたい」方」ということ。
もともとAWS Loft Tokyoは、「挑戦(アイデア)をカタチにする」をコンセプトとしたスタートアップとデベロッパーのための空間で、AWSサービスを利用する開発者は平日の開放時間にスペースを利用することができる。
しかしこのイベントに関しては、猫×AIへの技術的関心があるエンジニアだけでなく、純粋なる「おねこ様のしもべ」なるテック系猫愛好者も参加していた印象であった。
■首輪型ウェアラブルデバイス『Catlog』の発表
株式会社RABOは、お留守番する「おねこさま」のために、首輪センサをつけることで、外出時もアプリから様子を見守りできるアプリCatlogを生み出したスタートアップだ。
ねこの動きのバイオロギングデータを機械学習モデルで活用している。ニッチな需要であるがファンとなったユーザからのSNS投稿での評判が高く、アプリリリース後の7daysで 90%、30daysで 78%という稼働率を示すなどアクティブユーザーが多いのが特徴である。
また、「外出時に自宅でねこがどうしているのか心配」という悩みを抱える愛猫家マーケットは日本だけのものだけでない。おねこ様への愛が溢れ、将来的にグローバルマーケットを目指している。
■技術的特徴 〜どうやってセンシングデータを活用したのか?
おねこの見守り、というゴールを考えたときに、室内の録画では狭いスペースに入り込んだ後の動きがわからなくなるということに気づいたCEOは、「ねこの動き」そのものに注目した。
首輪型のセンサから収集する情報は、タイムスタンプと、ねこの動き(XYZ軸方向の動き)だけで、センサーログを行動ログとして、AWSにのせている。XYZデータの特徴量から猫の動きを判断し、デザイン性の高いアプリのUIで可視化している。
アノテーションコスト(データへのタグや意味付け)は高く、部分時系列問題として扱う。
変化がなければ、「SLEEP」。睡眠に近い動き方であるものの、やや動きが見られれば「RELAX」。 Y(横)は少ないが上や横は大きい時は「WALK」、 小さな振動が2−3分波形として続く時は「EAT」といった具合だ。
ねこによって、食べ方が違う。このような個体差などはCatlogに組み込まれた機械学習で対応できるポイントであるという。とはいえ、動きの波形上変化がないアクション(例えば、トイレ時にウンチをしているのかどうか)は現状判断できていない。
なお、ローンチ前の開発の過程で、ファイナルファイルをパブリックに置くのはどうかと思い、AWSのクラウドフロントを利用してアクセス制限をかけるようにしたという(署名つきURLからアプリをダウンロードできるようにした)。「自分で実装せずに済んで良かった」と開発担当者の方は語った。うまくAWSのサービスを組み合わせることで、インフラ面の心配面をせずにアプリケーション開発に専念している。
(Catlogアプリのインターフェース。ねこ様のイラストがとても可愛い。)
ユーザーから求められるのは、機械学習モデルの判定精度だけでない。UI・UX上の違和感がないことが重要であるという。
■感想
AWS Loft Tokyoの、「挑戦(アイデア)をカタチにする」というコンセプトを体現したプロダクトを知ることができたと感じた。
ペット保険の企業と、予防医療の領域で提携開始するというお話を伺った。ニッチなようで、熱烈なファンがいる「おねこさま」市場は、確実に開拓されつつある。猫を起点にこの技術活用方法は他領域にも展開していくかもしれない。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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