こんにちは。UXデザイナーのリビングストンです!皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は前回のブログに引き続き、Remote Design Weekカンファレンスでのセッションの一つ、Slackのプロダクトデザイナーによるプレゼンテーション “How Customers Helped Shape the Future of Slack” から学んだこと、そして感じたことを記そうと思います。(カンファレンス詳細は一つ前のブログに記載してあります。こちらもぜひご覧ください。)
みなさん、Slackをご存知でしょうか。日本でもSlackを使い始めた会社が多くなってきていると聞きました。簡単に言えば、Slackはビジネスシーンで使われるチャットツールです。今では学校、医療現場など様々な分野でSlackが活用されるようになっています。Slackはたくさんの優れた機能を備えており、使い勝手が良いので、個人的に好きなツールの一つです。Slackを使った際の第一印象は、洗練されたデザイン、使いやすさ、わかりやすさで、すぐ使いこなせたことができました。
Slackユーザーならご存知かもしれませんが、Slackは3月18日、デザインの変更といくつかの新機能を発表しました。”How Customers Helped Shape the Future of Slack” のセッションではこのデザイン変更(=リデザイン)について説明がありました。Slackが世に出てから、初めての大規模なリデザインだったそうです。この発表はちょうどコロナが流行し始めた時期と重なりました。社員が在宅勤務に移行し通常通りに業務を進めるのが難しかったにもかかわらず、今までにない団結力を発揮して発表に至ったということでした。
「リデザイン(Redesign)」は「もう一度デザインする」という意味です。「リデザイン」=「視覚的、そして機能としてのリニューアル、サービスまたは利用の流れのリニューアル」と捉えることができます。
まずスピーカーがはじめに説明してくれたのは、Slackがリデザインにおいて重要視した3つのポイントです。
1. Don’t make people think ユーザーに考えさせないようなデザイン
ユーザーに、どうやってSlackを使うのか、どこに何があるのかを探すといったことに時間を割かせないために、ユーザーが考えなくても直感的に使えるできるようなデザインにすることが大切だということでした。
2. Show fewer, more important things 重要な箇所だけ見せるデザイン
重要であるものとそれほど重要でないものをきちんと分け、重要なものの数を絞ってデザインを見せるということです。
3. Be good hosts ホスピタリティー精神溢れるデザイン
ユーザーの立場を理解して、ニーズに寄り添い、ユーザーが使いたいと思うプロダクトを作り提供することです。
これらはデザイナーにとって肝に命ずべきことであり、Slackはこの3つのポイントをしっかり実践しているなと思いました。
ここからはSlackが行ったリデザインのいくつかを紹介したいと思います。
まずは各チャンネルのナビゲーションバー。このナビゲーションバーでは新規ユーザーがSlackを使う時にクリックできる箇所がたくさんあり、どこから始めればいいのかと困惑してしまうという難点があったそうです。
画像下の一番上が初期のデザインでした。そこから真ん中のデザインのように、全て無くしてシンプルにし、そこから重要なものを付け足していき、一番下のデザインに至ったそうです。何人がチャットグループにいるのかを一目で知りたいという意見が多かったそうです。
次に新規投稿ボタン。この新規投稿ボタンは新機能で、初期のデザインにはありませんでした。
新規投稿ボタンは大抵、サイトの右上にありますが、最近のモバイルアプリでは、新規投稿ボタンが右下に浮いているようなデザインを多く見かけます(ツイッターなど)。そこでSlackもモバイルアプリのように、新規投稿ボタンを右下に配置するデザインにしたそうです。ところが、ユーザーにそのデザインを試してもらったところ、ユーザーはそのボタンの用途を理解できなかったということでした。多くのユーザーは、新規投稿ボタンが右上にあるデザインに慣れていて、その配置の方がすぐ理解でき、使いやすいという意見だったそうです。
他にも様々なリデザインと新しい機能があります。私もユーザーとしてSlack を使う度、ユーザーの利便性を考え抜いたリデザインになっていると感じています。このセッションを通して学んだことは、リデザインは簡単なことではなく奥が深いということです。
ユーザーにより良い使い勝手を提供するためには、デザインの小さな変更でさえ、長く複雑なプロセスを要します。使い勝手の良し悪しは、ユーザーが製品を選んで使うかを左右します。つまり、ビジネスが成功するか否かにも繋がるわけです。Slackのリデザインは世界各国にいるチームと提携しあい、何ヶ月もかけて何十回にも及ぶユーザーテストを経て、ようやく最終デザインが完成し、発表することができました。
人々にとって、変化を受け入れることは簡単ではありません。多くの人は、自分が慣れ親しんでいるやり方を変えなければならないのは面倒だと感じるでしょう。デザインを改善したはずが、ユーザーによっては「改悪」となってしまう場合もあるのです。すべてのユーザーが100パーセント満足するデザイン、リデザインを実現するのは難しいかもしれません。しかし、ユーザー目線に立って、日々デザインを進化させていくことが大事なのだと理解しました。
コロナ感染拡大で、人々の暮らし方、働き方が大きく変わり、コロナ終息後もこの変化は持続していくと思います。このような社会の変化の中、ユーザーのニーズも変わってきます。Slackは、そのような変化に対応し、自社の強みを生かし、時代に適応したプロダクトを提供することに成功したのです。Slackのデザインチームの力量に感銘を受けました。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
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2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
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※石角友愛の著書一覧
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