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GAFAは解体するのか?ー東洋経済 寄稿記事 掲載「GAFA解体?バイデン政権で強まる巨大IT包囲網 実施が見込まれる政策のポイントを解説」

2020/12/15 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

GAFA解体?バイデン政権で強まる巨大IT包囲網
実施が見込まれる政策のポイントを解説

アメリカのシリコンバレーやシアトルを拠点に持ち、日本企業向けにAI開発をするパロアルトインサイトCEOでAIビジネスデザイナーの石角友愛(いしずみ・ともえ)氏。現地から見た、バイデン政権が実施するとみられるIT関連政策の狙いと知っておきたいポイントを解説します。

トランプ政権下で問題視された政治的検閲

ジョー・バイデン政権では、IT業界に多くの影響を与える政策の実施や変更を行うと考えられます。注目を集めるものの1つが、アメリカ通信品位法第230条(セクション230)です。

トランプ政権下で、セクション230の問題点として指摘されていたのが、共和党寄りの保守的なコンテンツが非優先的な扱いを受け、ネット上で抑制されているというセンサーシップ(政治的検閲)に関する内容です。例えば、ツイッターでは独自の調整ルールに基づき、トランプ大統領の選挙中のツイートの約50%を非表示扱いにしました。これが政治的検閲だと主張しているのです。

トランプ氏は2020年5月、大統領令に署名し、結果的にアメリカ司法省は修正法案を提案。そして連邦通信委員会(FCC)は10月に法律の解釈の再検討を約束しました。

セクション230は、1996年に作られたテクノロジー企業に2つの重要な保護を与える法律です。たった26語で成り立っており、その内容は「インタラクティブ(双方向)なコンピューターサービスを提供する者は、第3者が提供するコンテンツのパブリッシャー(発行者)としてみなされない」=ゆえに一部の例外をのぞいて第3者が提供するコンテンツに関して法的責任は生じない、というものです。

例えば、AさんがフェイスブックにBさんを名誉毀損する内容の文章を書き込み、結果的に1万人以上に拡散したとしても、フェイスブックはその情報のパブリッシャーとはみなされないため、名誉毀損を受けたとしてBさんがフェイスブックを訴えることはできないというものです。

日本でも芸能人などが週刊誌を名誉毀損で訴えるケースがよくありますが、それは、週刊誌などのメディア会社が発行者として自分たちが発行するコンテンツに法的責任を持っているからです。

フェイスブックやYouTubeを運営するグーグルなどのインターネット企業は、プラットフォームを提供している「中立的立場」にあるテクノロジー提供者ですので、ユーザーが投稿するコンテンツに法的責任は持たないということになります。

セクション230でもう1つ大事な点は、プラットフォーム上に投稿されるコンテンツをどのように表示するか、表示しないかなどのルール設定をプラットフォーマーが自由に行えるということです。

この2つの法的保護により、GAFAをはじめとする多くのインターネット企業は急速な成長を遂げてきました。

特に、UGC (User Generated Content)とよばれる口コミサイトやレビューサイト、SNSなどの個人が情報発信をするサイトは、この2つの保護があったことが成長を後押ししたといっても過言ではないでしょう。

6割はフェイスブックでニュース取得

冒頭で触れたように、トランプ政権下では、共和党寄りの保守的なコンテンツが非優先的な扱いを受け、ネット上で抑制されているという政治的検閲に関する内容が問題視されました。

実はバイデン氏も、民主党予備選挙のときから、セクション230の問題点を指摘していました。ただし、その理由はトランプ政権のものとは違います。主に、フェイスブックやそのほかのソーシャルメディアプラットフォーマーが、セクション230の法的保護があることを理由に、故意に虚偽情報を広めているという指摘です。

2016年の大統領選挙以降、SNSなどのインターネット企業の「中立的立場」に対して疑問視する意見が強くなりました。ネット企業は一貫して「自分たちは何が真実かを裁く立場にはいない」「(憲法で守られている)言論の自由を尊重したい」と言っていますが、アメリカ人の58%がフェイスブックから、28%がYouTubeからニュースを取得しています。

このようなネット企業のプラットフォームが多くの国民にとってのニュースチャネルになっている現状や、また、コンテンツを拡充しユーザーを多く集め広告主から収益を得るというビジネスモデルを考慮すると、フェイスブックやグーグルなどはメディア企業(発行者)なのではないか?と考えることもできるわけです。

実際に、『the four GAFA』著者のスコット・ギャロウェイ教授はフェイスブックに関しては「完全なメディア企業だ」と言いきっています。

また、このコンテンツはユーザーに相応しくないから非表示にしよう、という調整をしている以上、完全な中立プラットフォームとはいえません。

100人中100人が問題視するような差別的コンテンツなどは調整すべきだとしても、線引きが曖昧な政治的見解コンテンツなどになると、非常に難しくなってきます。1996年にできた古い法律であるセクション230を見直して、「発行者とは何をさすのか」を明確にし、法的責任の解釈もする必要があるということです。

フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏などはセクション230の見直しに積極的な姿勢を見せており、「言論の自由が守られるためにも、調整のルールをさらに透明化する必要がある」と言っています。

YouTubeなどのUGCやフェイスブック、ツイッターなどの巨大SNSが、すべてのコンテンツに法的責任を持つとなると、コンテンツとユーザーの量が拡張し続ける中で、対応するのが非常に難しくなります。

そこで、調整ルールを透明化する、コンテンツ表示に関するAIやアルゴリズムを公開する、第3者によって成り立つ専門家組織の設立を義務化する、などに比重がおかれるのではないかと思います。同時に、説明可能なAIに関する重要性もより増してくると考えられます。

ただし、セクション230の問題点をどう見るかに関して、民主党と共和党で大きな差異があるということを忘れてはいけません。

もし上院で民主党が勝てば、セクション230の抜本的な修正はより実現可能性が高くなると考えられています。一方で、もし共和党が勝った場合、共和党と民主党で修正すべきと考えている内容が異なるため、修正に至るには時間がかかると考えられており、今後も注目です。

巨大IT企業に対して規制を強める

トランプ政権下の司法省は、グーグルに対して反トラスト訴訟を起こしました。訴訟内容として「独占的立場を利用して競争を抑制しイノベーションを阻害した」と非難しました。バイデン政権に移行した後もこのようなスタンスは変更されず、訴訟は続くと考えられます。

エリザベス・ウォーレン氏などのプログレッシブな民主党候補者は、予備選挙の際に巨大IT企業を解体することについて言及していましたが、バイデン氏はそこまで極端なスタンスはとっていません。

グーグル1社に絞って集中攻撃をするというより、アマゾンやアップルなど巨大IT企業全体に対して規制を強めると考えられています。12月9日には、アメリカ連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックを反トラスト法違反の疑いで提訴しました。

なおアップルは先手を打っています。2020年11月、AppStore(アップストア)内からの売り上げが100万ドル以下の会社について、手数料を通常の30%から15%に縮小すると発表しました。

アップストア内の売り上げが100万ドル以下の会社の、アップストア売り上げ貢献度は5%にも満たないため、大きな痛手ではありません。

そして、政府が介入する前に自発的にこのような変更をするのは、とてもスマートな決断であるといえます。政府が規制を強化する理由の多くが、「小さい会社やイノベーションの種となる次世代のスタートアップの発展を阻害していないかどうか」だからです。

シリコンバレーのテック業界にとっては、副大統領として活躍が期待されるカマラ・ハリス氏の存在も大きな意味を持つといえます。彼女はサンフランシスコ・ベイエリア出身です。

そして義理の弟のトニー・ウェスト氏は、アメリカ・配車サービス大手、Uber(ウーバー)のチーフリーガルオフィサーとして、ギグワーカーを個人事業主に分類する2020年の住民立法案「Proposition 22」において、58%の賛成票を勝ち取った戦略チームの主要人物です。

インターネットプロバイダーも厳しい

バイデン政権になると、GAFAなどのプラットフォーマーだけでなく、インターネットプロバイダーも厳しい対応を迫られそうです。

オバマ政権下の元FCC議長であるトム・ウィーラー氏によると、バイデン政権下では(トランプ政権が無効にした)ネット中立性法の回復が優先事項になるということです。

ネット中立性とは、コムキャストやベライゾンなどのインターネットサービスプロバイダーが、ケーブルやセルタワーを流れるすべてのコンテンツを平等に扱う必要があるという考えです。

つまり、他の会社のコンテンツをブロックしたり区別したりしながら、一部のデータを「高速レーン」に移してユーザーに届けることはできないというものです。

言い換えれば、これらのインターネットサービスプロバイダーは、ケーブルパッケージを売り込んだり、バンドルでビデオストリーミングサービスを購入したりすることを奨励するため、他社サービスへのアクセスをブロックしたり、通信速度を低下させたりできないということです。

FCCは、ブッシュ政権とオバマ政権の両方の下で、ネット中立性保護を実施しようとして何年も費やし、2015年に全面的なネット中立性命令を可決しました。

しかし2017年12月、トランプ政権下でFCCはその命令を放棄することを決議し、ブロードバンドプロバイダーが特定コンテンツをブロックまたは抑制できるようにしました。

バイデン政権下ではオバマ政権時代に確立したネット中立性を復元すると考えられており、ネットプロバイダーにとっては競争を強いられる時代になるともいえるでしょう。

中国企業への制裁は続く予定

バイデン氏は、国土安全保障省を率いるトップとして、サイバーセキュリティの経験が豊富なアレハンドロ・マジョルカス氏を選びました。彼はオバマ政権時代に重要なサイバーセキュリティのイニシアチブを率いて、全米商工会議所のサイバーリーダーシップ評議会の議長を務めた人です。

バイデン政権では、中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する制裁を継続する可能性が高く、中国との電気通信取引を行わないように同盟国を説得する取り組みを継続する予定です。

一方で、アメリカではトランプ大統領と同じようなアグレッシブなやり方ではなく、TikTok(ティックトック)などの中国製品のセキュリティを確保したうえで、大きく異なるアプローチを取ることが期待されています。

バイデン政権でのIT政策は方向性としては定まっているものもあれば、未知数のものもあります。例えば、私たち日本人にとってもセクション230の法改正などは他人事ではないといえます。同じようなネット企業に対する法的整備が議論されるきっかけにもなりますし、消費者としてGAFAのプロダクトをどう使っていくかを考えるきっかけにもなります。いずれにせよIT業界に対する広義の規制強化は避けては通れなくなるでしょう。

今までシリコンバレーとワシントンDCには大きな距離があったのですが、これからは巨大IT企業とワシントンDCの歩み寄りが必要になります。より透明性の高いビジネスプラクティスと基準設定、第3者機関の設立などに関する議論がこれからも活発になりそうです。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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