SaaS成功企業には共通する「最初の100万人獲得」のグロース戦略がある…
Slack、Stripe、Figma、Databricksのケース
こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。リモートワークが定着するにつれ、以前私が書いた寄稿記事でも紹介したFigmaをはじめとしたB2B向けのSaaSツールの成長が著しくなっています。
通常マーケティングなどが難しいと言われるB2B業界ですが、今回はこのようなB2B向けのSaaSツールを開発している会社が、「最初の100万人のユーザーを獲得するためにどのような戦略をとっていったのか」。また、その後のグロースフェーズにおいてどのようなKPIを作り成長を遂げたのかについて紹介したいと思います。
今回、SlackやFigma、Stripe、Databricksなどの急成長を遂げたB2B向けSaaS企業を調べて判明した、グロース戦略に関する共通項は以下の5つでした。
そこで、これら5つのポイントに沿って、具体的なケーススタディを紹介したいと思います。
例えばSlackでは、ローンチ当初から「競合他社があるにもかかわらず、実は前例のない市場を創造する」ことに取り組んできたと言われています。
B2B向けの社内コミニュケーションツールは既にたくさん存在していたものの、多くの企業が気がつかないうちにコミニュケーションに関する重大な問題を抱えていたのです。それは、ツールが溢れすぎた結果、SMS、Eメール、スカイプチャット、フェイスブックのプライベートグループなど、社内で複数のツールを使ってコミュニケーションが行われていることで、「コミニュケーションが一元化できていない=関連性の高い情報が後から検索できない、共有できない」ということでした。
企業が気づいていないこういった問題の解決策を売り込むために、Slackは 「プロダクトではなく、イノベーションを売る」ということに注力。単なるコミニュケーションツールとしてのポジショニングではなく、「コミュニケーションのコスト削減」や「手間いらずのナレッジマネジメント」、「意思決定の迅速化」、「チーム内のすべてのコミュニケーションが瞬時に検索可能で、どこにいても閲覧できること」、「Eメールの75%削減」といったメリットを全面的に押し出すことで、その他のツールとは別のレベルでのポジショニングを獲得していったのです。
これらのメリットを売りにすることで、Slackは新たなコミュニケーションツールを探していた訳ではない顧客をも惹きつけ、初期ユーザーを増やすことに成功しました。
また、ウェブサイト上の支払い処理ソフトウェアとAPIを提供するStripeの成長は、開発者に優しいペイメントサービスという圧倒的ポジショニングを創業当時に確立したことが成功要因の一つだと言えます。
EC市場が活性化してきた創業当時、色々な会社が自社サイトで支払い機能を拡充させようとしていましたが、開発者の視点からすると、オンラインでの支払い機能実装は難しい、セキュリティが心配、データ統合が難しい等の課題を抱えていました。
そこで、Stripe社は開発者目線で作成されたしっかりとしたQ&Aドキュメント、詳細なテスト環境、使いやすいAPI、誰でも利用できる決済UI等を提供することに成功。Stripeは 「開発者の請求処理の面倒を取り除くという目標を達成するために活動しています」とオフィシャルに言っているほど、開発者目線のサービスに重きをおいています。
UXに強みを持つことで有名なSlackですが、それは創業当初から始まっていたようです。SlackのCEO兼共同創業者であるスチュワート・バターフィールド氏によると、同社は初めてプロダクトを使うユーザーの立場になって、「使いづらさの原因」となりうるあらゆる可能性を見つけ出すことで、ほぼ完璧に近いプロダクトを作るための努力を重ねてきたとのことです。
また、Slackは初期の段階からユーザーのフィードバックを活用することでユーザー体験を向上させることを重視していました。
その考え方は現在にも生かされており、去年、Slackで大規模なサイトデザインのリニューアルが実施された際に、プロダクトデザインチームがこだわった点として以下の3つがカンフェレンスで発表されました。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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