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DX推進を阻む「三つの壁」とは – 読売新聞オンライン掲載<上>

2021/09/01 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

シリコンバレーから指南役が教える 大企業のDXを阻む「三つの壁」<上>

POINT
■デジタルトランスフォーメーション(DX)は単なる業務のデジタル化ではなく、デジタイゼーションとデジタライゼーションという段階を経て完成する。組織や業務の構造変革を伴い、継続して変革が起きる状態が「完成形」だ。■多くの大企業がDXに乗り出しているが、乗り遅れまいと、何をすべきか中身を詰めずにとりあえず推進部署などの 器だけをつくると、簡単に改善できる課題や前例を集めるだけで実行に移せない「FOMOの壁」に苦しむことになりかねない。

■DXを進めるには、まず社内の改善すべき課題を洗い出すことが大切だ。一気に組織に横串をさして各部署の課題を共有すると、その後のDXを進めやすい。組織の縦割りをなくし、データを統合できるかどうかがDXの成否を占うカギになる。

パロアルトインサイトCEO(最高経営責任者)  石角友愛
聞き手・構成 調査研究本部 丸山淳一

石角さん

多くの企業がいま、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。コロナ禍で従来のビジネスモデルの変革が求められるなか、DXに成功するかどうかは、今後も会社が存続・発展できるかどうかのカギを握るといわれる。だが、鳴り物入りでDXを始めてはみたが、途中で行き詰まってしまう例が、特に大企業に多いという。

米グーグル本社を経て「パロアルトインサイト」の経営者としてさまざまな企業のAI(人工知能)導入をサポートし、日本企業のDXに助言や提案をしているAIビジネスデザイナーの石角友愛さんは、大企業のDXには進展を阻む「三つの壁」があるという。シリコンバレーを拠点に活躍している石角さんにオンラインインタビューで聞いた日本企業のDX成功の秘訣を、3回に分けて紹介する。

「デジタル化」はDXではない

日本企業の間で、DXの推進が合言葉になっています。私の会社、パロアルトインサイトに来る企業からの依頼も、少し前までは「需要予測にAIを使いたい」といった局所的なものが中心でしたが、最近は「社内のデータを一元化して意思決定の基盤を作りたい」といった会社を挙げてのDXへとシフトしてきています。コロナ禍によって、会社の文化や産業のモデル自体を構造的、中長期的に変革していかなければならないことに気付いた経営者が増えたことも一因だと思います。しかし、その一方で、そもそもDXとは何なのか、よくわかっていないケースも少なくありません。

「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」と「DX(Digital Transformation)」をまとめてDXと呼んでいる人が多いのですが、DXは、ただ業務をデジタル化することではありません。DXはデジタイゼーションとデジタライゼーションというフェーズ(段階)を経て完成するもので、組織や業務の構造変革を伴う改革なのです。

デジタイゼーションは、「アナログからデジタルへの移行」を指し、DXに向けた第1段階です。具体的には業務をペーパーレス化してハンコをデジタルにしたり、RPA(注1)によって人の代わりに業務をこなす自動化ツールを導入したり、経理をそろばんと紙からエクセル(Excel)に変えたりすることです。会計、営業、カスタマーサポートなどの社内の作業工程が主な導入対象で、省人化や最適化によるコスト削減効果はありますが、この段階では、まだ新たなシナジー効果までは期待できません。

デジタライゼーションは、「デジタルデータを活用した作業の進め方やビジネスモデルの変革」を指します。デジタイゼーションによって毎月の出入金の管理をそろばんと紙からエクセルによる一括管理に変えると、来月の売上高を予測しやすくなります。それを活用して、売上高予測のデータをもとに工場への発注量を決めるように仕事の進め方を変え、業務を改善できれば、デジタライゼーションまで変革が進んだことになります。

デジタライゼーションには、縦割りされた部署でデジタルを使った変革的なビジネスモデルや商品開発が始まる「サイロー(縦割り)ステージ」、そこから一歩進んでさまざまな部署が協力してDXを進める「部分的統合ステージ」、さらにプロセスや製品開発、ビジネスモデルを会社全体でデジタル化する「全社的統合ステージ」という三つのステージがあります。AIは、このステージを上がっていくために必要不可欠な「DXのビルディングブロック(注2)」だと私は考えています。つまり、DX推進のためにはAI導入が不可避であり、AIで課題を解決するには、必要なデータを取得しなくてはなりません。

こうしてたどりつく最終段階のDXとは、社内に横断的なデジタライゼーションの基盤が構築され、各部署がいつでもイノベーション(変革)が起こせる状態になることをいいます。会社が正常運行の状態でデジタライゼーションを続けられる組織になれば、経験や先入観によって固定化されてきた経営陣や社員のマインドセット(思考パターン)は変わり、会社のビジネスモデルも進化し、業界全体の地殻変動につながるかもしれません。DXは一時的な変革ではなく、「終わりがない戦い」なのです。

DXを阻む第1の壁…FOMOの壁

AIビジネスカンパニーとして100社を超える企業とDXに欠かせないAI導入の話を進め、DX担当者とやり取りしてきた経験から、DX推進には大きく分けて三つの壁が存在することが分かりました。

第1の壁はFOMОの壁です。FOMOとはFear Of Missing Out(置いていかれることを恐れる)の頭文字をとった言葉です。「とりあえずDXを推進せねば」「DXをやらないと企業価値が下がる」と考えてはいるが、何から手を付けていいかわからず、具体的に実行に移せない状況のことです。DX推進室をつくったり、総務部に担当者をおいたりして器を作ったのはいいが、社内のヒアリングにばかり時間を費やし、短期的に解決できる細かいIT(情報技術)関連の要望や依頼をリストにするだけ、個別の部署のRPAやペーパーレス化といった短期的に成果が上がりやすいことをするだけでは、DXはなかなか進みません。

同業他社の前例を集めるのは無意味

日本企業のDXが進まない大きな理由のひとつが前例主義です。DX担当者になると、まず前例を集めようとする人が多いのです。「うちの業界でAIを導入した事例を教えてほしい」とよく聞かれますが、前例を集めて「じゃあうちもやろう」とDXを進めても、それは結局成功した会社の後追いにしかならず、競争の優位性は得られません。成功事例ばかり集めても、もしかしたらたまたま成功しただけという可能性もあります。にもかかわらず前例を集めて、自分の会社と比較するといった調査にばかり時間をかけて、結局最初の一歩が踏み出せなくなっている例は、特に大企業に多くみられます。

そもそも、「うちの業界では」と、DXを産業別に考えるところから間違っています。それぞれの業界を調べればDXやAI導入の事例はたくさん出てきますが、業界にかかわらず拡張展開できる技術はたくさんあります。業界という「縦串」で事例を調べ過ぎて見失ってしまう機会損失のリスクは大きいと思います。

今は第4次産業革命の真っただ中で、業界の産業構造自体が変わっています。昔の競合相手が今の競合とは限らず、技術革新とともに競争環境も変わっているのに、業界別に事例を探しても、かえって視野を狭めてしまうことになりかねません。それよりも、自分の会社の中にどんな資産があるのか、解決すべき課題は何なのか、どんなデータがあるのに活用できていないのか、といった自分の会社の問題点を把握する方がずっと大事です。

DXを進める第一歩は、何のためにDXをやりたいのか、どんな課題を解決したいのかを明確にすることです。具体的な目的や戦略についての議論が不足したままで、DX強化という言葉ばかりが先行してしまうことは避けなければいけません。

各部署の課題を徹底的に抽出する

そのためには、まず各部署にどんな課題があるのかを徹底的に抽出することが必要です。ITやDXに関連するかどうかにかかわらず、社内の各事業部の課題をすべて出してもらうのです。DX担当者だけで事業部の各部署にヒアリングをしても、「忙しいのに新しい仕事を増やしたくない」「面倒くさい」「問題点を総務部やその先にいる経営陣に打ち明けると、自分の立場が危うくなるかもしれない」などの理由で、改善すべき課題を事業部の人が打ち明けたがらないことがあります。

不二家はDX推進のために組織に横串を通した

そういう場合には、私たちのような外部のプロが入った方が、課題抽出をより客観的に行うことができ、いい意味で変革のきっかけがつくれる場合があります。当社が携わった洋菓子大手の不二家のDXでは、総務部が横断的に各事業部の方を20人ほど集めて、そこで徹底的に課題を抽出しました。この作業を通じて社内に事業部の横断的チームができ、そのチームがDXをボトムアップで進める基盤になりました。

器だけつくっても意味がない一方で、不二家のように一気に組織に横串を刺す器をつくり、さまざまな事業部の人が自分の属していない部署の課題を聞けるようにすることで、部署を超えた連携が生まれることもあるのです。縦割りをなくし、部署ごとに管理していたデータをどの部署でも使えるようにするデータの統合ができるかどうかがDXの成否を決めるのです。

(注1)RPA(Robotic Process Automation)コンピューターを使って業務や作業を人に代わって自動化する技術のこと。導入するとマウスクリックやキーボード入力など、繰り返し行う業務を人に代わって仮想知的労働者(デジタルレイバー)が行うことで省人化が進む。
(注2)ビルディングブロック(building block) データ処理の流れや手順、機能をブロックのようにまとめること。ブロックを選択して必要な機能を組み合わせていくことで、システムの構築が容易になる。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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