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AI時代の教育のカギとなる専攻選びのポイント – 毎日新聞 寄稿

2021/11/16 教育, メディア掲載実績, 毎日新聞 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

生涯所得に数億円の差 大学は戦略的に選ぶ時代に

先日、米国人の知人から相談を受けた。大学3年生のご子息がやる気をなくしているという。大学に入学して半年ほどで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のため休校になった。大学2年生の1年間は全てオンラインで授業を受け、今年の9月から再び学校が開講してキャンパスに戻ったものの、調子が出ないのだという。

就職活動を控え、将来のことも考えなければいけない中、どのように自信を取り戻せばよいか悩んでいるということだった。また、別の知人からは、ご令嬢が4年制の有名私立大学を数学専攻で卒業したにもかかわらず、パンデミックで就職先が決まらずに困っていると相談を受けた。

学費は高騰

パンデミックで大学教育のあり方が問われ始めているのは事実だ。大学ランキングを発表している米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポートによると、米国の私立大学の場合、平均的な学費は年間3万8000ドル(約430万円)と言われており、ほとんどの学生が学生ローンを組んで通っている。

学生ローンの焦げ付きは社会問題にもなっている。また、州立大学の学費も年々高騰しており、州の出身者は年間1万ドル、州外から進学の場合は年間2万3000ドルだ。

学費高騰の背景には、大学側がランクを意識してスポーツ設備などを拡充していること、世界中の優秀な学生に志願してもらうための広報や試験などの費用増加、大学運営に関わる事務員らの人件費増加、州政府からの補助金減額、学費援助の種類が広がったこと――などが挙げられ、多面的な問題になっている。

大学の費用対効果

高騰する学費に対して、それに見合ったリターンが果たしてあるのだろうか。そう考える米国人が増えている。

例えば私が最近、知り合った技術者たちの中には、大学を中退している人も少なくない。大学でコンピューターサイエンスを体系的に学ぼうと進学したが、1年足らずで「これは自分の学びたいことではない」と考え、中退。その後、プログラミングを独学で習得、3カ月ほどの集中講座に通い、今ではIT企業でフルタイムエンジニアとして働いている。

大学4年間の学費と機会コストを考えると、このように早い段階で見切りをつけて就職をし、給料をもらいながら実践的なスキルを身につけた方がよいと考える人が多くなっていることにもうなずける。

専攻こそが大事な要素

また、経済的機会が少ない人々の支援を目的とした非営利のシンクタンクFREOPP財団の調査結果は興味深いものがある。これは1775校の大学が提供する3万もの学士号のプログラムについて、人生におけるROI(投資に対する収益。ここでは生涯所得の増加から大学の費用を差し引いた額)がどれくらいになるかを調べたものだ。

結果として分かったことは、有名大学を卒業したからといって給与が高い仕事につけるとは限らず、「何のプログラムを専攻していたか」こそがROIを決める大事な要素だということだ。

調査報告によると、プログラム間のROIの差は数百万ドルにも上る。例えば、全米で経済的に最も優れたプログラムはカリフォルニア工科大学のコンピュータサイエンス専攻であり、生涯で440万ドル以上、日本円にしておよそ5億円以上のROIを期待できる。その次がペンシルベニア大学の金融学専攻で430万ドル、そしてカーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス専攻の370万ドルと続く。

一般的な学部で言えば、工学、コンピューターサイエンス、経済学、看護学などのプログラムのほとんどは、大学の費用を差し引いても、生涯所得を50万ドル以上増加させるという。

進路選択の判断材料に

これに対し、ビジュアルアート(絵画などの視覚芸術)と音楽専攻の場合は、70%近くの卒業生のROIがマイナスになる。続いて宗教学と哲学専攻では60%近く、教育、文学、生命科学などでは30%近くの卒業生のROIがマイナスになるという。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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