こんにちは、CTOの長谷川です。
さて、今回は趣味のドライブの話です。ドライブと言っても、私が運転するのではなく、車が勝手に運転してくれるTeslaのFSD Beta(テスラ フルセルフドライビング ベータ版)についてです。
ここまでにたどり着く道のりは険しかったです。私が念願のModel Xを入手したのが2018年9月、購入してから実に3年後にようやく自動運転を獲得することができました。買った当初の搭載コンピュータはFSDバージョン2.5だったので、まずハード面でのアップグレードが必要です。FSDコンピュータのバージョン3は2019年に発表されたので、2019年の後半にサービスセンターでアップグレードしてもらいました。このCPUアップグレード自体は無料でしたが、シリコンバレーで森林火災による空気汚染が進み始めたのも2018年だったので、かなりの間「バイオハザードモード」で車内の空調を整えていました。なのでついでにHEPAフィルターも取り替えてもらいました。こっちは有料でした。余談ですが、私のTeslaのサービスに対する満足度は高いです。モバイルアプリで簡単に予約ができ、サービスセンターについてからは車のカギを担当者に渡して待機するだけです。必要なやり取りがあれば事前にアプリ上のチャットで済ませることができるので、ついてからあれこれと話す必要がありません。
FSDコンピュータをアップグレードしてから待つこと2年、イーロンマスクが次のツイートをしました。
Wow, lot of interest in FSD beta! Plan is to roll out version 10.2 midnight Friday, then on-ramp ~1000 owners/day, prioritized by safety rating.
— Elon Musk (@elonmusk) September 28, 2021
安全度スコアが高いドライバー順にFSD Betaの展開を始めるということです。テスラのオフィシャルブログによる説明文はこちらです。(https://www.tesla.com/support/safety-score)ここもTeslaらしいところで、アプリ上で「FSD Betaをリクエストし、自身の運転の安全度をTeslaが観測することを認める」というボタンを押すと、その時点から評価が始まります。そして自分のスコアをリアルタイムでアプリから見ることができます。私のスコアは以下のようになりました。
評価基準は以下のとおりです。
5番目の評価基準だけ補足すると、「オートパイロットで走行している限り1〜4による原点はなし」というルールがあります。つまり全部オートパイロットで運転したら減点なしということです。ただし、オートパイロットはドライバがハンドルを長期間手放してしまうと危険とみなし自動解除します。そして自動解除されたら減点ということです。
日頃メトリクスやスコアを生業としている私としては、一つ大きく気になる点があり、それは「ボタンを押してから家の周りだけものすごくゆっくりと運転して100点をとり、あとは車庫に入れて待つ」というメトリクスハッキングをする人が出てくるのではないかということです。実際にTeslaネタを取り上げる掲示板などではそういうことをする人がいました。Teslaがそんな見落としをするはずがないと踏んだ私は、何かしら「最低運転距離」のような隠れルールを入れるに違いないと読み、なるべく長い距離を100点を維持しながら運転するように心がけました。そしておじいちゃんのように運転すること2週間の後、念願の100点をゲットし、晴れて第一ラウンドからベータに招待されました。
実際に運転して(もらって)みて、これまでのオートパイロットとは全く違うものになったことは瞬時に分かりました。感覚で言うと、これまでのオートパイロットはいくつかのルールに基づいて運転していたのに対して、FSD Betaは「考えながら運転している」と言うイメージです。例えば、これまでは車が走行中に50メートルくらい前方で車が出てくるとオートパイロットは強めのブレーキを踏みました。かなり余裕があってもです。人間ならばブレーキを踏まないような場面です。ルールとして「前方に横向きの車があったら減速」みたいなルールが組み込まれているのではないかと推測します。FSDになってからそのような減速はありません。FSDのエンジニアが説明をしているプレゼンテーションでは、「周りの車がどのような動きをするかを予測しながら動いている」とありました。そのような挙動が必要な例として「4方向での一時停止」があります。ここでは先着順で優先順位が決まります。
こういう曲がり角も、FSDは安全に曲がることができます。そして、例えば車道に人間がいたり、自転車が走ったりしていてもちゃんと膨らんで避けながら走行します。対向車に大型トラックがあったら微妙に避けます。家から近所のスーパーとかの短距離なら、介入ゼロでたどり着きます。そういうことを経験すると、これまで運転がどれだけ自分にストレスを与えていたかを痛感します。割り込みをされるとムカついたり、後ろから煽られると神経質になり、みたいなことを微妙に感じながら日々運転していましたが、自動運転にすると結構そういうことがどうでもよくなります。なのでそういう意味でもストレスフリーです。
ただし100%安全かと言うとそうでもなくて、訳の分からないところで急減速したり、蛇行運転になったりするので、そういう時は軽くブレーキを踏み自分が運転します。ただ10月にローンチされてから大体隔週でソフトウェアアップデートがあり、運転の精度も上がってきている感じがするので2022年はこいつの成長を楽しみにしています。
他にもTeslaの自動運転のための学習データの集め方や、本番環境で不具合があったときに素早くAIのスイッチをオフにできる能力など、TeslaのAIの作り方にはかなり学ぶところが多いです。LIDARを入れないという決定については賛同しないですが、LIDAR搭載型の競合の動向も含め、これからの自動運転が面白くなってくるのではないでしょうか。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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