今週の注目カンパニー「Polarization Lab」
前回のLevel5 「#15 イーロンマスクがTwitterを買収して目指す世界とは」で、長谷川CTOが語っていた未来のSNSについての内容とリンクする記事があったので紹介します。
皆さんも馴染みの深いソーシャルネットワークサービス(SNS)ですが、まだ歴史は浅く20年程度しかありません。その中で、Myspaceやmixiなどがバージョン1、TwitterやFacebook、Linkedinがバージョン2のようにSNSのバージョンが年々進化する中、バージョン5くらいのSNSは、民間企業が会社運営として行うのではなく、社会インフラとして作るべきなのではないかという議論も上がっています。
そうした研究を進めるには、独立した組織が実証実験を行う必要があります。そこで、新しいSNSのあり方を社会学や心理学の研究結果に基づき、研究しているDuke大学の研究室「Polarization Lab」について紹介いたします。
ここでは、新しい科学的研究のためのソーシャルメディアプラットフォームを作り、機能のオン・オフや、新機能の導入といったテストを繰り返すことで、SNSが持つ社会的結束を高める機能を特定することができるといい、結果的にソーシャルメディアの基本的前提を評価するのに役立つと期待されています。
たとえば、技術系のリーダーたちは、長い間、人々のつながりの数によって成功を測定してきました。しかし、人類学者のロビン・ダンバー氏によると、人間は150人以上の人と有意義な関係を維持するのは難しいという仮説があります。
そこで、一部のソーシャルメディアユーザーが、少数のユーザーとより深いつながりを持つように促す一方で、他のユーザーは誰とでもつながることができるようにすることができる実験を行うことで、研究者はさまざまな状況における最適な接続数を調査し、深さを犠牲にすることなく人間関係の幅を最適化する方法を見つけ出すことができるとされています。
また、「ソーシャルメディアプラットフォームは、社会やグループごとにカスタマイズされるべきなのか」という問題も議論されています。現在のプラットフォームは、米国や西ヨーロッパの政治に大きな悪影響を与えているように見えますが、新興民主主義国家では逆のことが言えるかもしれないという研究結果もあがっています。
また、ある研究では、Facebookがボスニア・ヘルツェゴビナにおける民族間の緊張を緩和する可能性も示唆されており、ソーシャルメディアはウクライナの抵抗運動を支援するために世界中の支援を結集させるのに役立っているともされています。
今後、どのようにプラットフォームを設計し直せば、社会を強化することができるのか。Polarization Labのように、企業ではない団体が実験を重ねるていくことで、より良い形が生み出されるのではないでしょうか。
記事参考:
https://www.nature.com/articles/d41586-022-00805-0
参考論文:
Digital Media and Democracy: A Systematic Review of Causal and Correlational Evidence Worldwide
Testing the effects of Facebook usage in an ethnically polarized setting |