データの本質を捉えAGI実現に近づくAI「Gato」

「Reward is enough」の強化学習とは異なった手法でAGIに近づくDeepMind社のアプローチ

今週のテーマ：技術開発

パロアルトインサイトの嶋崎です。人と同じように思考し行動する汎用人工知能（AGI）の研究が進められています。2022年5月、DeepMind社がAGIの実現に近づく新しいアプローチを発表し、大きな話題を集めました。「Gato」と名付けられたモデルの画期的なポイントを紹介します。

シリコンバレーから現役データサイエンティストのインサイトをお届けする「The Insight」。今回取り上げるのは、AGIの実現に向けた新たな試みである「Gato」です。AGI へ近づいたとされるこの「Gato」ですが、同じDeepMind社が発表した「Reward is enough」の強化学習に関する研究ではなく、違ったアプローチであることがポイントです。

Gatoの研究で論文の研究者たちが示したかったのは「データは種類によらず本質的に同じもの」「種類ごとに分けることは必ずしも必要ではない」ということです。実用化を目指すというよりも、学術的な意味合いが強い研究だといえます。

? この記事から得られる３つのナレッジ
・Gatoのの画期的な学習方法
・データは種類によらず本質的に同じものという考え方
・Gato の弱点

論文データ：

今回のディスカッション対象の論文をご紹介します。

タイトル：A Generalist Agent
著者：Scott Reed et al.
掲載サイト：arXiv
発行日：2022年5月12日
引用数：
URL：https://arxiv.org/abs/2205.06175

? この論文を選んだポイント

情報の種類を気にせず一括で処理する手法が画期的で、今後のAGIの研究に大きな影響を与える可能性があるため。

? この記事に登場する技術キーワード

• AGI（Artificial General Intelligence）
  • 関連記事「AIを人間に近づけるAGI：なぜ強化学習の最先端をいくディープマインド社がAGI論文を発表したのか？」
• マルチモーダル
  • 関連記事「メタ学習とマルチモーダル：AIを人間に近づける挑戦」
• 強化学習
  • 関連記事「強化学習をビジネスに応用するには？」

目次

「マルチ」に対応するGatoのすごさ

多種多様な情報をまとめて学習する技術

Gatoのビジネスでの実用性は低い

「データは種類によらず本質的に同じもの」という思想

AIビジネスデザイナーのワンポイントアドバイス

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「マルチ」に対応するGatoのすごさ

まずはDeepMindが発表したAI「Gato」の何がすごいのかを解説します。

3つの「マルチ」に対応できるAI

一般的に実用化されているAIのほとんどは、ごく限られたタスクにしか対応できません。たとえば、チャットで質問に回答するAIは、それ以外のことはできないのです。

一方でGatoは、以下の3つの「マルチ」ができると論文中で強調されています。

☑️ 3つの「マルチ」

• マルチモーダル：複数種類の入力情報を扱える
• マルチタスク：複数の作業を同時に行える
• マルチエンボディメント：複数種類の作業ができる </aside>

なお、このうちマルチモーダルについては、過去記事で何度か取り上げています。あわせてチェックしてみてください。

メタ学習とマルチモーダル

三菱電機がAIを開発

Metaの自己教師あり学習

これらの「マルチ」でできることとして、論文では以下の例が挙げられています。

? 「マルチ」でできること

• アタリゲームのプレイ（詳細は過去記事を参照）
• 人と対話する文章の生成
• 画像を説明する文章の生成
• ロボットアームの制御

1つのモデルでこれらのすべてに対応できるAIの実現は、簡単ではありません。Gatoは従来にない学習方法でこれを実現したことで、話題を集めているのです。

 

Gatoができることの3つの具体例

Gatoができることのイメージをつかみやすいように、論文中で取り上げられている具体例を3つ紹介します。