元Apple Directorが書いた日本未発売の最新書籍をご紹介
こんにちは、CTOの長谷川です。
パロアルトインサイトのように少数精鋭で回している会社では、人材=企業です。良い人材を獲得し、その人材が活躍できる場を提供することが私の仕事だと考えています。なのでどうやって人材の良し悪しを見極めるか、どうやってそもそもうちに来てくれるような人材を見つけるのか、どうやって惹きつけるか、というようなネタにアンテナを常に立てています。
シリコンバレーの一流アクセレレーターであるYCombinatorは、まさにこの人材評価の面において圧倒的な競合優位性があります。Sam Altman、Aaron Schwarz、Patrick Collison、Brian Cheskyなどの超優秀な起業家を排出し続けられるのも、あくなき人材へのフォーカスがあるからです。彼らがどのようにして人材を見抜くかは、かなり公表されているのでいつも勉強しています。その中でもやはり創業者であるPaul Grahamのブログは必見です。また、Startup Schoolという無料のセミナーを通して投資家が様々なアドバイスをしているのでそれも勉強しています。
今回は、そのYCombinatorの卒業生であり、私のアップル時代の同僚でもあるDaniel Gross氏が「Talent」(人材、もしくは素質)という本をTyler Cowenという経済学者と共著で出版したので、Amazonで予約して購入しました。Daniel GrossはCueという会社を起業し、23歳という若さでアップルに売却し、Siriのチームにジョインし、そこで一緒になりました。今でも覚えているのが月に一度行われる経営会議で、大学を出たくらいの新卒社員とも変わらぬ年齢の彼が、全く物怖じせずに当時のVPであるBill Stasiorを含む経営陣に対して意見・質問をどんどん投げ掛ける姿です。私はたまたま自分が開発に携わった機能が議題に上がるので誘われて参加したのですが、23歳という若さでアップルのDirectorになることはアップルでも異例で、衝撃を受けたことを覚えています。
日本ではまだ出版されていないと思うので少し本書の内容を紹介しつつ、私の感想を述べます。
出だしは、なぜ今人材についての本を書いているのか、ということについて触れています。ここでいう人材とは、本書の中では「Talent with creative spark」(創造起爆型人材)と表現されています。何かを創造することができる人材というイメージです。ものづくりもそうですが、プロジェクトの企画を作って実行する、ゼロからNPOを立ち上げる、新しいポッドキャストを始めるなどの類のことも含まれます。そして、創造起爆型人材を見つけるにあたり、最も大きな障壁となるものが、「Beaurocratic approach to talent」、つまり人材に対する官僚的なアプローチであるとしています。官僚的アプローチとは、間違いを最小化し、何よりもコンセンサスを重視する手法です。日本の一括新卒採用などは、まさにその一例です。この官僚的アプローチにより、埋もれてしまっているダイヤの原石が世の中に数多く転がっている、と彼らは提唱しています。ここは本当に同感です。
続いて、面接の重要性と、具体的に何が良い面接の質問で、何が悪い質問かについて言及しています。ここで面白いなと思った質問は「What is it you do to practice that is analogous to how a pianist practices scales?」という質問です。ピアニストなら音階を練習するように、あなたは毎日どんな練習をしていますか、という意味です。どんなプロフェッショナルでも、常にスキルを磨き続けなければ行けないし、ピアノの音階の練習に例えることは、「基礎練習」の大切さを論じています。これを読んで思い出したのが、孫正義氏も若き頃は鉛筆を転がして毎晩ビジネスプランを練っていたという話です。単調でも繰り返し繰り返し行うことで、最後にはソフトバンクのような一流企業を作ってしまったということだと思います。この質問は本当に深くて、そこには、どうやって工夫してそのような単調な(つまらない)練習を続けられるような仕組みづくりをしているか、ということも含まれると思います。
次に取り上げられた質問はPeter Thiel氏の有名な「What is it you believe to be true that other smart people you know think is crazy?」(あなたが信じていることで、周りはクレイジーだと思うことはなんですか)という質問です。これはアメリカでは有名になり過ぎていて最近ではあまり効果を発揮しないとしていますが、私は今でも良い質問だし難しい質問だと思います。ちなみに私もいくつかの回答を持っていますが、少し過激な意見なのでブログに書くのは控えます。もし気になるなら直接聞いてください。
人材の性格についてもかなり言及されています。やはり人間は機械とは違うので、技術のようなハードスキルだけではなく、ソフトな部分も見抜くことの重要性について書かれています。成長の速度にも注目せよとのことです。できれば、1ヶ月に数回あって、その都度成長している人材がいれば要注意ということでした。
他にも、成功する起業家と失敗する起業家は圧倒的にメールの返信のスピードが違う(成功する人は分単位で帰ってくるが、失敗する人は数日かかる)、芸能界などでのスカウトの有用性と危険性など、面白い小話がたくさん入っていて示唆に富む1冊でした。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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