インターネットが普及した現在、テクノロジーも発展し、みなさんの社会生活においてもAIが身近な存在になっています。そんなAIについて何となくは理解しているものの、本質的な部分や仕組みについてよく分かっていない方はまだまだ多い印象です。そこで今回は、改めてAIという言語の意味や、活用事例、導入することのメリット・デメリットなどを解説していきます。
AIを何となくで把握している方や、まだまだ仕組みは理解できていない方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
AIとは“Artificial Intelligence”の頭文字を取った略称で、日本語に訳すと“人工知能”になります。AIは単一のテクノロジーではなく多種多様なテクノロジーの集合体のことを指すため、AIの定義は人によって異なります。よく耳にするであろう機械学習や、自然言語処理といった言葉は、すべてAIテクノロジーの一部です。それぞれの会社が、データや、分析方法など独自の組み合わせで活用することで、ビジネスにおけるゴールの達成に役立つ技術として活用されています。
AIでよく間違われるのが、「AI=ロボット」というように擬人化してしまうことがあります。残念ながら、現時点で自律的に人間のように思考し、行動するというのは不可能とされています。ただ、AIというテクノロジーを活用することで、音声や画像を認識させたり、予測値を弾き出したり、機械的に制御させるなどの効果を得ること可能です。
これらの効果を得るためには、あらかじめデータを使ってAIを学習させたり、実行までのプロセスを教え込む必要があります。ドラえもんのようなロボットの万能AIはなく、必ず目的に沿った学習プロセスを経ることで目的が達成できるツールとなっています。
AIには、主に特化型と汎用型の2種類に分けられます。特化型AIとはその名のとおり、個別の分野、領域に特化した形のAIです。弱いAIとも言われ、決まった役割の中で、限定された範囲の処理を行うシステムのことを指します。たとえば、気象データを分析して天気を予測したり、画像認識、自動運転システムなどの領域で使われています。基本的に、現在実用化されているAIはすべて、特化型AIに含まれると考えて良いと思います。
一方で、汎用型AI(AGI)は役割が限定的ではなく、様々な課題をこなし役割を持つことができます。人間のように自分で思考し、何をすべきかを理解した上で行動することができます。特化型よりも人間に近いシステムとなりますが、今のところ実現はできていません。
汎用型AIに関する研究論文をわかりやすく解説した記事を見てみる
では、仕事の現場でAIがどのように活用されているのか、その一部をご紹介しましょう。
チャットボットとは、ECサイトなどで、問い合わせ対応の自動化し、効率化を図るためのシステムです。このシステムが浸透するまでは、消費者は商品・サービスに対して分からないことがあった場合、これまでは電話やメールなどを使って対応していました。AIが搭載されたチャットボットを導入し、24時間365日いつでも消費者の質問に答えられるようにしたことで、顧客満足度の維持できたことはもちろん、人員の最適化ができ、カスタマーサポートの業務効率も向上させることに成功しています。
コールセンターの業務においては、オペレーターの聞き漏らしや管理者が全員の通話状況を把握しきれないといった問題があります。こうした問題を解消するために、AIによるの通話支援と通話状況の管理システムを導入が効果的です。AIからの通話支援(リアルタイムで通話音声をテキスト化)によって聞き漏らしが減り、正確に対応できるようになります。また、管理者もオペレーター全員の通話状況をチェックできるため全体の状況が把握しやすくなります。
手描き書類のデータ化「OCR(光学文字認識)」はこれまでも存在していましたが、近年はOCRにAIのディープラーニング機能を追加した「AI OCR」が発展しています。AIOCRによって文字の読み取りを行えば、そのデータが溜まるのでその分だけ文字認識の精度も向上させることができます。
弊社でも、宮城県仙台市に拠点を構える住宅設備部材販売のベストパーツ株式会社へのAIOCRを導入しました。ベストパーツ社では、取引先からの注文の9割をFAXで受けており、届いたFAXは担当者が仕分けて内容をシステムに入力し、保有在庫と照らし合わせ、部材の準備やメーカーへの注文などをしていました。この業務だけでかなりの手間と時間がかかっており、AIを活用して効率化を図りたいとご相談をいただきました。
書類のテキストを画像認識し、データ化するサービスはさまざまな企業が展開していますが、本プロジェクトでは手書き文字を含めたすべてのテキストに対し、高い精度での読み取りと機械学習を行い、さらに社内データと照合してより正確かつ効率的なデータ入力をサポートするAIモデルの開発に取り組みました。
業務にAIを導入する企業も増えてきていますが、具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
続いてはAIを導入した場合のメリットや、デメリットについて紹介していきます。
AIを導入するメリットの1つに、労働力不足の解消が挙げられます。単純作業など決められたものはAIに置き換えて自動化させることで、労働力不足を補うことができます。特に農業や漁業など、生活に欠かせないものでなおかつ人手不足が深刻化している業種でのAI導入は効果が高く、労働力不足を補いながら作業をすることが可能になります。
同じ動作を繰り返すような単純作業は特化型AIの得意とする分野です。また、人が作業をしているとプロであってもミスをしてしまうことはありますが、AIならその心配も必要ありません。ミスを確実に減らすことで自ずと生産性も向上していくでしょう。
また、重要な部分は人間が手掛け、そうでない事務的な処理をAIに任せることで業務負担も軽減できます。例えば、医師の場合はCT・MRI画像の初期の判断をAIに任せることで、診断にかかる時間が大幅に短縮することが可能ます。教師ならAIに答案の採点を任せることで、近年問題となっている教師の業務負担や時間外労働などを減らすことも可能です。
今後様々な業務がAIによって自動化されれば、24時間休まずに提供されるサービスも増えていくでしょう。あらゆるサービスをいつでも・どこでも受けられるようになれば、生活の利便性は向上するはずです。
まず大きなデメリットとして、AIの導入によって、判断が困難になってしまうというものがあります。人間だと何を考えてどう行動したのかが言語化されて分かりやすいですが、AIだとなぜこの判断・行動に至ったのかが不明瞭になるケースもあります。判断に問題があったとしても発見や対処が遅れてしまうというリスクは考えられます。
これはAIに限らずですが、ITサービスの導入により第三者によるサイバー攻撃を受けるリスクがあります。特にAIのシステム作成では、会社の機関データを入れることになるため、業務にAIを導入する際は、同時にセキュリティ強化にも努める必要があります。
AIを導入するメリットとして労働力不足の解消を挙げましたが、AIの分野自体が人手不足の状況です。AIを作れる人や使う人、管理する人などが需要に対して不足しています。特にAIを組み立てるエンジニアや、技術部門とビジネス部門の間に立ち、AIをどのようにビジネスに貢献させるかを考える役割が不足しています。
今後AIがさらに普及していくには、これらの問題点をクリアさせる必要があるでしょう。
ビジネスへのAI導入において、以前から「AIにより人間の仕事が奪われてしまう」という噂が広がっており懸念されるようになりました。しかし、この噂はAIに対する誤解によって生じたものです。最後に、AIが私たちの仕事を奪うわけではないこととAI時代に増える仕事についてご紹介します。
単調な作業を得意とするAIは、様々な業種において代替できる仕事があるとされています。特に会社の受付や取次、コールセンターのオペレーター、データ入力、事務員、経理などは、今後AIによる自動化が進んでいくとされています。既に窓口にタブレットを設置したり、オペレーションの一部を自動音声化させたりしている会社もあるほどです。
確かにこれらの仕事はAIが代替してしまうかもしれませんが、その分人間は別の仕事や新しいことに取り組むことが可能です。また、AIにも文脈を捉える仕事や人の心が関わってくる仕事は対応が難しいと言われています。AIが翻訳したものを文脈を捉えてより正しく直す新しい形の翻訳家なども誕生することになると思います。
将来的にAI時代が到来すれば、私たちの仕事は減ってしまうと懸念される方は多いです。一部のAIや自動化の技術を使うことで代替可能な業務はなくなることになると思います。しかし、AIを作るのは人間ですので、AIに学習をさせたり、正しく育てていくための別の仕事が生まれてきます。AIと聞いて難しそうだからわからない!と言って遠ざけることなく意欲的な人に関しては、むしろ雇用面でチャンスが発生すると考えられます。
例えば企業においては、人間とAI・機会に作業を分担させ最適化を目指す協働責任者や、AIに学習させるトレーナーなどの役割が新たに誕生すします。他にも、直接的にAIのことはわからなくても、専門領域とAIの技術者をつなくための「AIシナジスト」として活躍できるチャンスも増えていくでしょう。
デメリットでも解説したように、現在はAI人材が不足している状況です。人材が不足しているということは、その価値も高騰していることを意味します。特にAIエンジニアやデータエンジニア、データサイエンティスト、AI開発プロジェクトマネージャーなどはAIが活用されていくことで、ますます需要が高まることが期待できます。
今回は、そもそもAIとは何かというところから、AI導入のメリット・デメリット、AIについての誤解などを解説してきました。既に大小問わず業務の中にAIを導入し、作業効率化を図る企業も増えてきています。今後はより多くの中小企業でもAI導入が進み、仕事の取り組み方自体が変化していくでしょう。AIを作るのも人間で、操作するのも人間です。実際にはAIはあくまでも業務をサポートするツールとして捉え、より人間らしい仕事に注力できる環境を作ることが可能です。
AI人材は現時点でも不足しており、今後ますます需要が高まってくることが予想されます。もはやAIはインフラになりつつありますので、理系じゃないからや、難しそうと言って遠ざけるのではなく、まずは身近に感じて学ぶ姿勢をもつことでこれから先のAI時代を乗り越えていくことができるでしょう。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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