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医療とAIの関係性 知られざる医療現場でのAI活用
2022/08/31 ブログ 
by suzuki 

医療とAIの関係性

知られざる医療現場でのAI活用とは

私たちの暮らしの中で身近な存在になりつつあるAI技術は、暮らしにおける重要なインフラである交通・物流インフラや、医療や福祉分野においても積極的な開発・導入が行われるようになっています。その中でも親和性が高く発展が進んでいるのが、医療分野におけるAI技術開発です。

そこで今回は、医療AIが持つ可能性や、アメリカ最新事例などを中心に紹介していきたいと思います。医療とAIの関係性を深堀りしたい方や、AI活用によって医療現場をどのように切り開いていくのかなどを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。


▼目次

医療分野でのAI活用の現状

・医療AIとは?

・医療AIの可能性

アメリカの最新AI×医療事例

・新型コロナワクチンの開発にAIを活用

・スマートフォンカメラを使ってAIが皮膚疾患を判定する

・デジタルツインの導入で検査サービスの最適化を図る

世紀の詐欺事件とも言われる医療ベンチャーセラノス事件とは

終わりに


医療分野でのAI活用の現状

医療分野で現在活躍しているAIは、研究分野から日常的な健康管理のサポートまで、幅広い形で活用されています。まずは医療AIについて解説していきましょう。

・医療AIとは?

医療AIとは、その名の通り、AI技術によって医療の質を向上させる取り組みのことを指します。これまでの医療現場では多くの知識と、高い技術力を持った医師が中心となり、治療を手掛け、看護師を含む様々な医療職の方々がケアにあたっていました。治療や、ケアを行っているのはすべて人なので、医療ミスというのが起こっておりました。その原因は、ミスを起こした人の技術・知識不足ではなく現場の深刻な人手不足の状況が要因と考えられています。
人材不足の環境だと、一人ひとりの労働時間が長期化し、疲労や睡眠不足の影響でミスが生じてしまうということが起こっておりました。そんな慢性的な人材不足を解消するために、AI技術が注目され、医師や看護師などをサポートする「医療AI」の開発が進んでいきました。

・医療AIの可能性

医療AIの利用領域はさまざまで、画像診断支援や、ゲノム医療、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援など多岐にわたって活用されています。特に注目されているのが、AIを使った画像診断支援技術です。
医師が患者を診る前に、AIの診断を通すことで、診断作業の効率化や、医師自身も診断結果を裏付けるためのダブルチェックをにも利用できます。その結果、医師の作業負担を軽減でき、効率的な診断を実施することが可能です。
AIが医師の判断をサポートすることで、単独で判断することが多い医師のプレッシャーを軽減し、見逃しがちな重大な病気の兆候を見逃さずに済むようになります。
医療AIが今後さらに普及されていくことで、医療機関以外で医療を活用したり、個別化医療を提供できたりする可能性も高いです。

また、コロナ禍ということもあり、オンライン診療も浸透したことで、誰でもスマートフォンから気軽に診察や治療を受けられるようになることで、これまで医療現場での課題である「医療の地域格差」の減少も期待できます。過疎地域の特に高齢患者へのサポートは今後も必要になってくるものの、医療現場にAIの技術が浸透することによって今後も様々な可能性が期待できます。

アメリカの最新AI×医療事例

医療とAI、両方の分野で最先端をいくアメリカでは、既に様々な医療現場でAIが活用されています。そんなアメリカで発表されている最新のAI×医療事例を3つご紹介します。

・新型コロナワクチンの開発にAIを活用したモデルナ

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中に大きな影響を与えました。感染からしばらくして、アメリカのバイオベンチャーであるモデルナは、新型コロナウイルスに効果的なワクチン開発に成功し、世界各国へ出荷しました。実はこのワクチン開発にもAI技術が活用されていたのをご存知でしょうか?
モデルナは、2020年1月に中国政府が新型コロナウイルスの遺伝子配列情報を発表したその2日後には、ワクチン候補の設計図を完成させ、さらにその8週間後にはフェーズ1のワクチン開発と出荷を完了させていました。
これまで一番完成するまで早かったというSARSのワクチンでも約20ヶ月という期間を必要としていたため、それと比較して約90%ものスケジュール短縮に成功しています。
その大幅なスケジュール短縮の要因に、クラウドにデータを一元化したことが要因とされています。一つの場所にデータをまとめておくことで、円滑にAI導入の準備が行えると同時に、色んな部署にいる人が一つのデータを見てコミュニケーションを取ることができるようになったのも大きいと言います。

ワクチンを開発の現場では、人間が遺伝子配列の組み合わせを考える必要ありますが、これまではエクセルへのデータ入力をして考えてきました。それが、AIを使うことで、何万通りという膨大な数の遺伝子配列のあらゆる組み合わせを自動で作成できるようになりました。
また、ワクチンの品質検査もこれまでは人が行っていましたが、AIの画像認識技術などを取り入れることで自動化と少人化に成功しています。

・スマートフォンカメラを使ってAIが皮膚疾患を判定するGoogle

検索エンジンや、数々のインターネットサービスを提供するGoogleは、2021年5月にAIを導入した皮膚疾患診断支援アプリを公開しました。このアプリはスマートフォンのカメラを使い、皮膚や髪の毛、爪などの気になる箇所を撮影するとAIが部分的な皮膚疾患を特定してくれる機能が搭載されています。
現在、世界中で皮膚疾患に悩む人は20億人にも上ると言われており、特にアメリカでは皮膚がんが毎年数百万人が診断されるほど問題になっています。
これまでは、もし皮膚に異常が生じても、それをどう言語化して検索すれば良いのかが難しかったことから、Googleは3年の歳月をかけて、皮膚疾患の診断支援アプリを開発しました。異なる角度から気になる箇所をたった3枚撮影し、あとは症状や期間、肌のタイプなどの質問に答えていくだけで288の皮膚疾患のリストから可能性のあるものをリストアップしてくれます。これは、約65,000枚もの画像や診断データ、数千枚にも上る健康な肌を含む非識別データ、キュレーションされた数百万枚もの画像をAIに深層学習することで、AIモデルを作成したといいます。年齢や性別、人種、肌のタイプなどもきちんと考慮され、データが偏らないようにしています。現在は、まだ試験公開の段階であるものの、問題なく研究が進めば、今後世界的に普及する可能性は高いでしょう。

・デジタルツインの導入で検査サービスの最適化を図る

大企業のサプライチェーンを中心に、デジタルツインを導入する企業が増えていますが、デジタルツインは、世界の医療機関からも注目されています。デジタルツインとは、AIを活用して現実空間のデータを高精度かつ高頻度で取得し、適切に未来を予測するための新しいシミュレーション方法です。2021年現在では、世界人口のおよそ半分が検査サービスへのアクセスが制限されているか、全くできない状況にあると、医学誌「ランセット」が設置する委員会が報告しています。そんな中、アメリカのCoupa社とスイスの非営利団体FINDは、限られたリソースでも医療システムに割り当て、最適化させることで検査サービスを提供するツールを構築しています。このツールは現在、ザンビアやベトナム、バングラデシュ、ブルキナファソなどの地域で試験導入が行われており、ザンビアではHIV検査サンプルの平均輸送距離が3マイルまで短縮され、以前に比べて11倍も少なくなったと言います。

世紀の詐欺事件とも言われる医療ベンチャーセラノス事件とは

医療AIは目覚ましい発展を遂げているものの、残念ながら最先端の技術をアピールし“世紀の詐欺事件”とまで言われた事件も発生しています。医療ベンチャーとして華々しい発表を続けていたセラノス社は、指先から少量の血液を採取して診断センターへと輸送すると、迅速に検査結果を出せる全く新しい技術を開発したと、多くのメディア上でアピールし、投資家から約3億5000万ドル(現在の日本円で、485億円)もの資金調達に成功していました。

その技術は「エジソン」という診断器で、たった1滴の血液から約30種類の検査項目を実施できるというものです。その後セラノスの時価総額は約90億ドルにも達し、ファウンダーのエリザベス・ホームズは「自力でビリオネアになった最年少の女性」として一躍有名になり、次世代のスティーブ・ジョブズとまで称されていました。
しかし、その栄光も長くは続きませんでした。ウォールストリートジャーナルが、セラノス社に対する疑惑の記事が投稿してから、アメリカの食品医薬品局(FDA)の調査が入り、セラノスが謳ってたエジソンは機能しておらず、検査の大半を他社の検査機器を使って行っていたことが指摘されてしまったのです。その結果として、2018年には会社を解散するまでに追い込まれて、代表のエリザベスホームズは血液検査で投資家相手に詐欺を働いたとして有罪評決されました。

ただ、一方で、既に解散しているものの、セラノス社が実現しようと取り組んできた血液検査の簡易化というモデル自体は、コロナワクチン接種時にも活用されたアプローチでした。今後、医療現場のAI活用がさらに発展することで、新たな検査技術が誕生し、セラノス社が目指していた血液検査の簡易化が達成する可能性は十分に考えられます。

終わりに

今回は医療業界におけるAIの特徴や、アメリカを中心とした事例について紹介してきました。現在、日本でも医療分野へのAI技術を取り入れようと様々な動きが見られるようになっています。AIのような最先端の技術が人命に関わる医療の現場に浸透することで、様々な応用の可能性が考えられます。時代が追い付かず達成できなかったセラノス社の描いた未来を作り出す企業も誕生してくると思いますので、今後も注目していきたい分野ですね。

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パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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