DXを通した産業改革の重要性を伝える音声番組「Level 5 by Palo Alto Insight」
各回の内容を文字でもお伝えすべく、文章でまとめた記事を投稿しております。ポッドキャスト内容の概要を読みたい方はこちらの記事をお読みください。詳しい内容は音声ページよりお楽しみください。
先日、WeWork創業者のアダムニューマンが2度目の資金調達に成功しました。これは、アンドリーセン・ホロウィッツというシリコンバレーで最も有名とされているベンチャーキャピタルから投資を受けたという内容になっており、アメリカだけではなく世界中で話題となっています。
世間の反応は二極化している
以前の放送で今週のおすすめコンテンツとして紹介した「WeCrashed 〜スタートアップ狂想曲〜」を観た方ならご存知でしょうが、WeWorkは大幅な赤字業績のまま、トップのアダムニューマンが辞任しました。当時、さまざまな問題を抱えた上に資金を私物化していたアダムニューマンは、非常に厳しい評価をされることが多かったのですが、大きなセカンドチャンスを手に入れたということで、とても注目されています。
しかし、このニュースに対する世間の反応は二極化しているようです。これだけの失敗をしたにもかかわらず、再度大きなチャンスを掴むことに成功したアダムニューマンのカリスマ性を評価する一方、なぜ再び彼を支援するのかといった厳しい声も聞こえます。
評価する意見があることに対して、山崎はアメリカ人特有の応援文化があると指摘しています。アメリカでは、基本的に「チャンスを与える」ことを重要視しているため、失敗した経験というのも逆に強みになるのです。このことから、日本との文化的な違いもみてとれるかもしれません。
これまでの経験を生かせるか
長谷川は、これまでのシェアオフィスビジネスとの違いについて指摘しています。今回のビジネスモデルは、BtoBではなく一般の方を対象にしたものです。具体的には、大人用のドミトリー寮を実施するマンションを提供するビジネスモデルであり、普通のハウジングをターゲットにしています。
そのため、現在アメリカで増えているホームレスへの対策になったり、家の物価上昇に対する解決策の1つになったりするかもしれません。アダムニューマンには、これまでの失敗を生かして大きなイノベーションを起こしてくれることを期待したいです。
今後も引き続き、「Level 5 by Palo Alto Insight」ではコメントを募集しております。
ぜひお気軽にご質問ください。
第33回で取り上げる「今週のホットニュース」は「The Metaverse Will Enhance — Not Replace — Companies’ Physical Locations」です。
ニュースの概要
このニュースは、これまでの放送で取り上げてきたメタバースに関するニュースとは少し異なる視点の主張が盛り込まれています。具体的には「メタバース成功の秘訣はフィジカルロケーションにある」というもので、ハーバードビジネスレビューの論文記事がテーマとなっています。メタバースが物理的な場所や都市に取って代わるものではないという意見をもとに、Meta CEOのマークザッカーバーグ氏とは相反する主張の論文内容に沿って、各出演者の視点から議論していきました。
「メタバース成功の秘訣はフィジカルロケーションにある」とはどのような意味なのでしょうか。これは、メタバースが物理的な世界を拡張するための仕組みとして、ビジネス現場に導入されるだろうということです。
例えば、メタバースの技術が入ることによって、美術館の見学などもオンライン上でリアルにできるようになるでしょう。また住宅を購入する人は、実際にその物件を訪問する際にメタバースを通じてオンラインで見学ができるようになるかもしれません。つまりは、今いる場所の体験をより良くするという意味でのメタバース活用が、今後は増えていくのではないかと予想しているのです。これはある意味で「VR」というよりも「AR」的な捉え方になるのかもしれません。
また出演者の長谷川は、この主張に沿って未来が進んでいくのであれば、メタバースは今でいう「SNS」と同じような立ち位置になるのではないかと予測しています。つまり、ネットワーク上のバーチャルな世界で色々な人が繋がっているところで、自分達のビジネスやコンテンツをどう宣伝していくのか、という使われ方をされるということです。
この論文には、もう一つの興味深い主張がみられます。それは、各国がメタバースに対して抱いている期待感の大きさです。
例えば、上海ではメタバース都市計画というものを発表しており、メタバース産業の発展のために100社以上のメタバース関連企業を創出する計画を発表しています。これにより、メタバース技術の世界的リーダーになるという強いメッセージが伺えるでしょう。またインドでは、上海のメタバース計画からわずか10日後に、ARエンジニアやVRエンジニアなどのバーチャル人材を創出する計画を発表しています。このように、多くの国でメタバースに対する期待感が高まっているのです。
日本においても、東京の良さを最大限生かせるようなメタバースの開発や、他国では表現できないようなメタバース技術が開発されると面白いかもしれません。浅草に行って観光を楽しみながら、その土地でしかできないメタバースの体験などがあると、より産業が発展する可能性を感じます。
これまでの放送でも、さまざまな分野でのメタバース活用が議論されてきました。しかし山崎は、メタバースの方が現実世界よりも魅力的になった場合、フィジカルロケーションの価値はむしろ下がってしまうのではないかと指摘しています。
例えば、メジャーリーグの試合がメタバース上で観戦できるようになると、わざわざ現地に行って試合を観る必要は無くなるでしょう。むしろ現地で観戦するよりも、より臨場感のある演出などが施された場合、メタバース上で観戦する方がいいと思う人も出てくるかもしれません。
しかし、メジャーリーグ側はそれを良しとするのでしょうか。やはり、球場で実際に応援しながら、生で試合を観戦してほしいと思うのではないでしょうか。そう考えると、メタバースの発展と同時進行で、スタジアムでのリアルな体験価値というのを上げる必要性も出てくるでしょう。このように、リアルでの体験と、メタバース上での体験価値はお互いに高め合っていく必要性があるのかもしれません。
そして石角は、メタバースが発展することによって、フィジカルの価値が逆に高まるのではないかと分析しています。
現在、ハーバードでの講義の多くがリモートで参加できます。その反面、なかなか対面での授業というのが少なくなっているのが現状です。しかし、ハーバードの対面授業の価値は、やはりデジタルで講義を受けるよりも魅力的な部分がたくさんあります。そのため、対面での授業の価値というのも、ここからさらにプレミアム化する可能性があるでしょう。
「今週のおすすめコンテンツ」は、長谷川の紹介する「House of the Dragon」です。
こちらは、「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズの最新作となっております。ゲーム・オブ・スローンズの200年前の世界を描いた物語となっており、これまでの作品を観てきたファンにとっては非常に楽しみな内容になっているでしょう。日本ではU-NEXTにて独占配信中なので、興味のある方はぜひ一度観てみてください。
それでは、次回の放送もお楽しみに!
#33の実際の音源はこちらからお楽しみください。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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