パロアルトインサイトCEO石角友愛が、4月からレギュラーコメンテーターを務めているNHKラジオ「マイあさ!」内のビジネスコーナー「マイ!Biz」。今回は、レギュラー放送2回目の出演回に「AI人材の育て方」というテーマで、AIに対する捉え方や、高校生向けAI人材育成カリキュラム「AIと私」の内容を抜粋してお話した放送を振り返ってご紹介したいと思います。当日に音源を聴くことができなかった方も、聞いていただいた方も振り返りながらぜひご覧ください。
司会:
現在、AIの開発会社のCEOだけでなく、高校生向けにAI教育をおこなっているそうですが、どのようなことをしているのですか?
石角:
東京にある、東京女子学園という中高一貫の女子校に向けて「AIと私〜AIで幸せを作ろう〜」を開講しました。このサブタイトル「AI ”で” 幸せを作ろう」とあるとおり、AIでというところがポイントで、AIというとどうしてもターミネーターのようにいずれ人間を支配しうる得体の知れない怖いものというイメージを持たれる方が少なからずいるんですね。実際にアンケートをとったところ、AIというと私の仕事を将来奪う怖い存在という回答をする方も多くいました。
そこで、AIがそういった得体の知れないものではなく、将来仕事の現場で自分がより良い仕事をするための支援ツールであるということを理解してもらうために、あえてAI ”で” という表現にしました。AIは、あくまで自分の仕事や、生活を補佐していくツールなんだよということを伝えるために名づけました。また、私という一人称をタイトルに持ってくることで、将来自分が理系に進むとは思っていない生徒さんに対しても、この授業が自分ごとなんだと考えられるようなカリキュラムにしたいという意味を込めて、このタイトルにしました。
司会:
高校生向けのAI人材育成カリキュラムということですが、コンピューターのプログラミングを教えたり、エンジニアの育成を目的にしているということではないですよね?
石角:
実はそこがポイントでして、講座の中には直接的にプログラミングを教えるという部分もあるのですが、あくまで軸は「なぜ私が高校1年生のいま、AIを学ぶことに意味があるのか」という部分にフォーカスを当てた内容になっています。
例えば、AIが社会課題の解決にどのように使われているのかという話や、ビジネスの現場でどのように使われれているかなど事例を数多く紹介し、プロジェクトベースで、AIの基礎的な素養とビジネスでの応用の理解を促す内容になっています。
司会:
「なぜ私が学ぶことに意義があるのか」というと、実際の授業ではどのようなことを教えているのでしょうか?
石角:
AIとは、日本では人工知能と呼ばれますが、実際にAIがその学習をしている様子を実践を通して学ぶ形になっています。これまで実際に行った授業では、生徒たちが持参した筆箱や、ペン、メガネケースなどの文房具の写真を複数の角度から撮影して、その写真をAIに学習させることで正しく筆箱やメガネケースなどの分類をAIができるかどうかを試すという実践的なプロジェクトを行いました。
司会:
筆箱とメガネケース、ペンだと、筆箱とメガネケースの分類が難しそうですね。
石角:
そうですね、例えば、黒い筆箱の写真を学習させて、自分の別の青い筆箱の画像を見せたときに、それをちゃんと筆箱と認識することができるのか。そのAIでは画像を通した時に確率が出るので、それが筆箱だと思う確率は80%などのデータを見ることができます。そのようなAIが学習していく流れを体験した上で、「なんだAIって全然判別できないんだね」という経験をすることが重要で、人間のようにゼロの状態から必ずしもクリエイティブな創造をAIができないんだということを学ぶことで、結局はAIも人が裏で動かしているんだということを肌で感じることができます。この流れを体験することで、なんとなく怖い存在というイメージが払拭されていくので、そのAIをどのように使っていけばいいのかというような前向きな議論につなげてほしいと思いっています。
司会:
実際に授業で学生たちが学んだような物体の認識、画像認識は、ビジネスの現場においてはどのように使われているのですか?
石角:
例えば、アメリカの大手農業メーカーでは、画像認識の技術を使って、雑草にピンポイントで除草剤を噴射するという技術を開発しています。農作物に農薬をかけると、環境への問題もありますので除去するべき雑草をピンポイントで画像認識でキャッチしその雑草にのみ農薬を当てるというシステムです。
司会:
このAIに学習させてみるという授業を通して、生徒たちからはどんな反応がありましたか?
石角:
生徒たちからは「AIが得意なこと、不得意なことがわかったので未来に対してワクワクしてきた」「企業がAIに任せられるところは任せて他に人員を回せるようになってほしいので、AIには今より効率よく勉強させる方法を学びたい」
軽音楽部に所属している生徒は「音楽を聴いたら楽譜を作ってくれるようなそんなAIを作ってみたい」と目を輝かせながら話している生徒もいて授業をやってよかったなと感じました。
司会:
石角さんが考えるAI人材というのはどのような能力を持った人のことを指しますか?
石角:
AI人材と言っても、AIを開発するようなデータサイエンティストやプログラマといった技術職はとても大事なのですが、実はそれだけではないというのがポイントです。
AIというのは、学習させたAIを製品やサービスに組み込んで、消費者やユーザー使いやすいような形にしたり、新しいビジネスを創造したりと、AIを使って顧客の課題をどう解決に導く提案ができるかといった役割を担える人材が求められています。
弊社では、このような人材をAIビジネスデザイナーと呼んでいて、AIを使って新しいビジネスを創造したり、コンセプトを考え、それを実際に実行に落とし込むといったもつことが重要になります。
例えば、ある企業がこのデータを使って新しいビジネスを始めたいと相談されたときや、社内のデータの活用性を考えたいとなったときに技術と経営、投資判断といったさまざまな立場に立ってプロジェクトを動かしていける役割というのも今後のAI人材に求められるスキルだと考えています。
司会:
これからの時代はAIに向けて、AIを利用して、問題を解決したり、プロジェクトを動かしていく能力を養っていく必要があるということですね。
石角:
そのためには、AIに対する漠然とした恐怖心を払拭することが必要です。まずはAIを正しく理解して、便利にツールにすぎないという事前知識を養うことがとても重要です。AIが人間をコントロールするのではなく、私たちがAIを活用して、より高付加価値な仕事にどのように集中していけばいいのかというような考え方ができるようになるマインドセットを養っていくことが必要だと考えています。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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