「Metaphor」ジェネレーティブAIを活用した未来の検索エンジンの強みと使い方

インターネットから必要な情報を探し出すコツを解説

今週のテーマ：技術開発

パロアルトインサイトの嶋崎です。仕事でもプライベートでも、Google検索をよく使っている方は多いかと思います。しかし、検索しても求めている情報をなかなか見つけられず、もどかしく感じた経験もあるのではないでしょうか。
新しくAIを活用することで、20年間Googleが一強のインターネット検索をもっと便利で快適にしようと、新たに登場した検索ツール「Metaphor」を紹介します。

シリコンバレーから現役データサイエンティストのインサイトをお届けする「The Insight」。今回取り上げるのは、AIを活用した検索ツール「Metaphor」です。

💡 この記事から得られる３つのナレッジ
・Metaphorはどんなツールか
・使い始める際の手順
・的確なプロンプトを書くための考え方

 

📖 このテーマを選んだポイント
自己教師あり学習を行ったAIの事例であり、手軽に試せるツールであるため。

📖 この記事に登場する技術キーワード

• GPT-3
  • 関連記事「自然言語処理の世界に衝撃をもたらした「GPT-3」」
• 自己教師あり学習
  • 関連記事「訓練データ量を劇的に減らす新たな機械学習」
  • 関連記事「Metaのマルチモーダル型自己教師あり学習は何がすごいのか」

目次

AIを活用した検索ツール「Metaphor」

Metaphorによる検索の例

Metaphorを使い始める手順

的確なプロンプトを書くための考え方

AIビジネスデザイナーのワンポイントアドバイス

---

AIを活用した検索ツール「Metaphor」

まずはMetaphorがどんなツールかを解説します。

プロンプトによって検索を行う

Metaphorは、新しいサーチエンジンとして開発され、Dall•e2 やStable Diffusion といった画像生成AIのアイデアと同じくプロンプトを使用して、Googleでの検索と同じように「Web検索」ができるツールです。スタートアップ企業の「Metaphor」が運営しています。

Metaphorは、Web検索がほとんど進化していない課題感から開発されました。その理念について、公式サイトのブログ記事から引用します。

Search today looks largely like search 20 years ago. Search engines do a reasonable job at returning results that match the literal content of your query but often fail to understand your real goal. The effect is that even for simple questions, it’s often quite easy to get lost in a sea of irrelevant results.

日本語訳：今日の検索は、20年前の検索とほとんど同じように見えます。 検索エンジンは質問内容と一致する結果を返すという点では、それなりの働きをしますが、人の真の目的を理解していないことがよくあります。その結果、簡単な質問であっても、しばしば無関係な結果の海に迷い込んでしまうのです。

Metaphorでは、表現豊かな文章を「プロンプト（prompt）」として入力して、検索を行えます。検索に創造性を発揮する余地が生まれて、新しい体験ができるのです。Metaphorを使いこなすことで、従来の検索では発見できなかった情報にたどり着けるかもしれません。

なおMetaphorは日本語でも検索できますが、英語ほどの性能は発揮できないようです。

「自己教師あり学習」が用いられている

技術的に見ると、Metaphorにおいて大きな役割を果たしているのは「自己教師あり学習」です。

AIの開発においては、「人によるラベル付け」がされたデータを、どのように大量に集めるかが課題となることが多くあります。しかし、自己教師あり学習ならAIはラベル付けのないデータからも学べるため、データ収集が容易なのです。

Metaphorはインターネット上から膨大なデータを収集し、自己教師あり学習を進めます。そして、データの背後にある「パターン」を発見して使いこなすことで、最適な応答ができるようになるのです。

自己教師あり学習は、画像生成AIの「Stable Diffusion」や大規模言語モデル（Large Language Models）の「GPT-3」でも使われている技術です。これらはまったく異なるツールに思えますが、実は仕組みはよく似ています。それぞれのツールは、与えられた文章に基づいて、以下の応答をします。

• Metaphor：Webサイトのリンクを予測
• Stable Diffusion：画像を生成
• GPT-3：次の単語を予測

このように整理すると、出力する情報の種類が異なるだけで、似ていることがおわかりいただけるでしょう。

GPT-3については、過去記事「自然言語処理の世界に衝撃をもたらした「GPT-3」」で紹介しました。また、自己教師あり学習については、過去記事「訓練データ量を劇的に減らす新たな機械学習」や「Metaのマルチモーダル型自己教師あり学習は何がすごいのか」で詳しく解説しています。これらもぜひあわせてお読みください。

Metaphorによる検索の例

Metaphorではどのような検索ができるのか、具体例を紹介します。

テンプレート

Metaphorの公式サイトには、プロンプトの例がテンプレートとして用意されています。検索のやり方がGoogleとは大きく異なることは、テンプレートの文章を見るだけでも明らかです。

 

（画像引用：https://metaphor.systems/）

テンプレートでは、プロンプトの一部をいくつかの候補から選んであてはめられます。単語を置き換えるごとに、検索結果が変わる様子を確認してみるとよいでしょう。

検索結果の例

テンプレートを利用した検索の例を紹介します。まず下図は、以下のプロンプトで検索を行った場合の結果です。

Here’s a cool reserch paper about large language models：

日本語訳：これは大規模言語モデルに関する素晴らしい研究論文です：

 

（画像引用：https://metaphor.systems/）

実際に論文のリンクが多数提案されていることが確認できます。ある分野に関する論文を探す際に使える、実用的なプロンプトだといえます。

また、下図は以下のプロンプトで検索した結果です。

He would be a good candidate to hire for a crypto startup. (Parsonal website

日本語訳：彼は仮想通貨のスタートアップ企業が雇うには良い候補者だろう：（個人的なWebサイト）

（画像引用：https://metaphor.systems/）

実際に、仮想通貨に詳しい個人が運営するサイトのURLが表示されました。企業が人材を探す際に、使えそうなプロンプトです。詳細な条件をプロンプトに付け加えることで、より便利に検索できるでしょう。

Metaphorを使い始める手順

Metaphorで自由にプロンプトを入力して検索を行うためには、事前にいくつかの手順を踏んでおく必要があります。とても簡単に済みますので、その手順を解説します。