こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。今年ももうすぐ終わりですので、2022年のAI業界のトレンドを総まとめしたいと思います。
今年最も話題となり、印象的だったのは「画像生成AI」の台頭ではないでしょうか。
これは、人間がプロンプトと呼ばれるテキストでAIへ指示を出し、その指示に従った画像をAIが自動で生成する技術です。
そんな画像生成AIのハイライトを時間軸でまとめてみたいと思います。
OpenAIが開発した画像生成AI「DALL・E 2」が公開されると、生成された画像がとてもアーティスティックだと世間の注目を集めました。それに続くようにグーグルも画像生成AI「Imagen」を開発し、生成された画像の質が「DALL・E 2」より優れているのではないかといった議論を巻き起こすなど、こちらも話題を呼びました。
※DALL・E 2は発表当初はBeta版の限定的な公開で、Imagenは非公開だった
MidjourneyはAIの研究者や開発者だけでなく、13歳以上なら一般の人でも自由に利用でき、かつ25回という限られた回数であれば無料で使えることから瞬く間に大人気になりました。
TwitterやInstagramなどのSNS上で数多くのAIアート作品が投稿され非常に注目を集めました。また、開発を担当したMidjourney社は少数精鋭の小規模企業ながら黒字化にもいち早く成功しており、経営の観点からも注目です。
2022年8月22日に全世界へ公開されたStable Diffusionは、オープンソースで作られたことが大きな特徴でした。
Stable Diffusionの機械学習モデルは、ライセンスを明記すれば営利・非営利を問わず使用できます(ただし、法律に違反するもの・武器などの人に危害を加えるもの・誤った情報を拡散する恐れがあるものなどで利用することは禁止)。
このため、開発に対する門戸が一気に広がり、秋以降にはデザインツールのCanva上で画像生成機能が実装されたり、もともと小説の自動生成AIであったNovelAIから派生して二次元イラストに特化したNovelAI Diffusionが生まれるなど、同種の画像生成AIが次々と登場しています。
日本でも、「AIピカソ」というスマートフォンアプリが発表され、最近では同社が「いらすとや」と提携した「AIいらすとや」が無料Appランキング1位にランクインするなど、引き続き話題に事欠かない分野となりそうです。
画像生成AIにより誰でも簡単にアーティスティックな画像が作成できるようになった背景には、画像生成AIがインターネット上の画像や写真、絵画を大量に学習した過程があります。
そして、その学習データには歴史的な絵画だけでなく現在活躍中のアーティストの絵も含まれているため、アーティストたちは画像生成AIに自分の作品が模倣されるリスクにさらされることになってしまいました。
実際に、インターネットで現役のアーティストの名前を検索すると、本人が描いたのではない作品も表示されることが増えてきています。そこで、アーティスト側もAIに対抗する動きを始めています。
例えば、Stable DiffusionやMidjourneyなどの学習に使われた58億枚の画像の中に自分の作品が含まれているかどうかを検索することができる「Have I Been Trained?」というサイトもオープンしました。こうしたサイトによって、アーティストがAI企業に使用の取りやめなどを訴え出る際の助けになることが予想されます。
一方で、ストック素材大手Shutterstockはアメリカ時間の10月25日にOpenAIとの提携を拡大すると発表しました。
OpenAIの画像生成AIシステム「DALL・E 2」をShutterstockのコンテンツと統合し、ユーザーが利用できる画像生成AIツール「Shutterstock.AI」を提供することを明らかにしました。実は、2021年頃から、Shutterstockは保有する大量の画像データをOpenAIのDALL・E 2へ学習データとしてライセンスしており、両社は協力関係にありました。
OpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、「Shutterstockからライセンスを受けたデータは、DALL・E 2のトレーニングに不可欠なものでした」と述べた上で、「我々は、人工知能がアーティストの創造的なワークフローに不可欠な要素となることや、将来のコラボレーションが生まれることを楽しみにしています」と未来への期待を語りました。
同時に、Shutterstockは「Contributer Fund(貢献者ファンド)」の設立も発表しました。これは、DALL・E 2の学習のために提供していた画像を作成したアーティストたちに対して、同社が報酬を支払うという内容です。
具体的には、Shutterstock社が「Shutterstock.AI」によって生成された画像を販売する場合、そのAIを学習させるために使用された画像の生みの親であるすべてのアーティストが報酬を得るというもので、アーティストが受け取る金額は、自分の画像が訓練データセットにどれだけ含まれていたかに基づいて決定されます。
このファンドについて、Shutterstock社の最高経営責任者であるポール・ヘネシー氏は、
と述べています。
OpenAIは2022年の年末ぎりぎりまで、新サービスのリリースで話題になっています。12月にローンチし、いま世界中で話題になっているChatGPTもその1つです。その能力について、ニューヨーク・タイムズのテクノロジーライターであるKevin Roose氏は「ChatGPTは、端的に言ってこれまで一般に公開された人工知能チャットボットの中で最高のものだと言えます」と述べて絶賛しています。
同氏の記事によると、過去10年間のAIチャットボットは大きな進化を遂げておらず、近年になってようやく「マーケティングコピーを書く」というような特定のタスクをこなすのに長けたツールが生まれたものの、専門領域から外れたタスクでは使い物にならないようなケースがほとんどであったといいます。
ところが、ChatGPTは従来のツールとは一線を画す「賢くて奇妙かつ柔軟なツールである」と紹介されています。
ChatGPTが「よくできた対話AI」であることは間違いありませんが、一方、どこまで有用なのか、出力するテキストが正確なのかは議論の余地があります。
2022年は、今までの技術にさらに磨きがかかり、実用度が増したケースも多く見受けられました。例えば自動運転もその一つです。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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