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アマゾンvs.ウォルマート──小売り王者が次に狙う「巨大市場」とは? – ITmedia寄稿記事掲載

2023/01/24 メディア掲載実績, ITメディア 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

アマゾンvs.ウォルマート──小売り王者が次に狙う「巨大市場」とは? – ITmedia寄稿記事掲載

米国でアマゾンやウォルマートといった巨大な資本を持った小売企業が、ヘルスケアビジネスを買収する動きを見せており、注目が集まっています。

リテール大手がなぜ医療ビジネスに参入するのでしょうか? 今回は、巨大な米国の医療業界に参入するリテール大手の取り組みとその狙い、戦略についてご紹介します。

アマゾンやウォルマートが、ヘルスケアビジネスを買収している(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

まず、米国の医療業界の規模がどれほど大きいかを紹介します。調査によると、米国の国民医療費は2021年に4.3兆ドル(554兆円以上)、1人当たり1万2914ドル(約166万円)に達し、28年には6.2兆ドル(800兆円近く)に達すると推定されています(メディケア・メディケイド・サービスセンター調べ)。

また、コンサルティング大手のデロイト・トーマツによると、現在の増加ペースが続けば、2040年までに、医療費は21年時点の3倍の約12兆ドル近くに達し、GDPの26%を占めると予測されており、これは先進国の中でも一番高い数値になるといいます。

このように巨大な産業である医療業界に、近年積極参入しているのが冒頭で述べたアマゾンやウォルマートなどの小売り大手企業です。アマゾンは、22年7月に医療サービスを提供するOne Medical(ワンメディカル)を5400億円相当で買収し、医療サービスの拡充に向けて本腰を入れて取り組む姿勢を示しました。

米国では、国民に健康保険加入義務はなく、民間企業が提供する保険に加入することが一般的です。かかりつけ医の登録が必要で、保険会社のネットワークから選ぶシステムがあります。日本とは異なり、病気やケガ、健康診断、健康相談も基本的には全てかかりつけ医を受診し、特定の疾患で専門医に受診する場合は、まずかかりつけ医から紹介状をもらう必要があります。

このように米国の「プライマリーケア(初期診療)」の市場は、民間保険会社の選定するかかりつけ医に依存するシステムになっており、かかりつけ医が自宅や勤務先から遠くにいる場合も珍しくありません。また、患者がある程度自由にかかりつけ医を選べるような保険プランは、通常高額になっています。

アマゾンはそんな診察予約や薬局への処方薬の受け取りといったプライマリーケアについて、「人々のヘルスケア体験を再構築することを目的としている」と宣言しており、これに非常に期待がかかっています。

アマゾンが買収したOne Medicalとはどんな企業か?

One Medicalは、07年に内科医のTom Lee(医学博士)によって設立されました。同社は、高品質でアクセスしやすく、患者に合わせたケアを提供することを使命とし、プライマリーケアの医療事業としてスタートした会社です。

One Medical(公式サイトより)

米国のプライマリーケア市場でOne Medicalが競合優位性を発揮している背景にはいくつもの要因がありますが、そのうち5つをご紹介します。

(1) 利便性

One Medicalが運営する125以上にも及ぶクリニックは、診療時間の延長やオンライン予約など、患者にとってアクセスしやすく便利なように設計されています。

(2) パーソナルなケア

One Medicalの医師とスタッフは、患者に合わせたケアを提供することに重点を置いており、電子カルテシステムにより、医療従事者間の情報共有が容易にできるようになっています。

(3) テクノロジーの活用

One Medicalは、医療記録へのオンラインアクセス、遠隔医療サービス、医師とのコミュニケーションや健康情報の追跡を容易にするモバイルアプリ、AI活用、チャットボット導入など、患者体験を向上させるためのテクノロジーを駆使しています。

例えば、同社の電子カルテシステムでは、機械学習アルゴリズムを用いて患者データを分析し、リスクの高い患者を特定しているとのこと。これにより、ケアチームはこれらの患者と積極的にコミュニケーションを取り、サポートとフォローアップケアを提供できるといいます。

(4) 保険適用

One Medicalは、複数の保険会社と契約しており、患者は病院での自己負担なしで治療を受けることができます。

(5) 紹介制度

One Medicalの医師は、必要に応じて患者を専門医に紹介することができるため、患者はニーズに応じた最適な治療を受けることができます。

アマゾンとのシナジーが期待されるのは

こうした特徴のうち、アマゾンとの親和性という観点から、特に3つ目の「テクノロジー活用」が注目されています。

One Medicalは、独自の電子カルテシステムを導入しており、これにより約80万人分の医療データを確保しているため、まずデータ活用という点でアマゾンと親和性が高いと考えられています。また、医療現場において重要な要素として「処方箋」がありますが、薬を患者へ届ける技術やノウハウに関しても、Amazonの持つ物流システムが活用できるでしょう。

そして、Amazonプライムとうまく組み合わせることによって、プライマリーケアをサービスの一環としてプライムユーザーに提供することも可能となります。これにより、新規のプライム会員の獲得にもつながるでしょう。このように、アマゾンとOne Medicalは非常に相性がよく、さまざまなシナジーが生み出せる可能性があるのです。

対抗するウォルマートは

この、アマゾンのOne Medical買収のように、大手小売業がプライマリーケア市場に参入する動きは、小売企業が既に持つ米国全土の顧客ネットワークや物流ネットワーク活用、データ活用が主な目的と考えられます。

また同時に、大手小売りが持つ店舗ネットワークに薬局機能だけではなく、簡単にケアを行える医療施設を備えることで、米国の医療制度を改革し、さらなるユーザーの獲得、ロイヤルティーの向上、客単価向上などを狙っていることが考えられます。

例えば、22年にウォルマートは利益の大きいフロリダ市場に、医師が常駐する「ウォルマート・ヘルス」センターを新たに数カ所開設しました。この施設では、プライマリーケアサービスのほか、緊急医療、歯科・眼科、行動医療サービスなど、さまざまなサービスを提供する予定ということです。

米メディアのInsider intelligenceの記事によると、ウォルマートでは、18年時点において、この「ウォルマート・ヘルス」を29年までに4000店舗に拡大する計画に経営幹部が署名したことが明らかにされており、プライマリーケア市場参入の動きは何年も前から進んでいたことが分かります。

ウォルマート・ヘルスのWebサイトによると、米国人の実に3人に1人が医療費を気にして病院に行くことをためらっています。すなわち、医療費を下げることができ、費用の透明性が高くなれば、今より多くの市場が手に入ると考えられます。

ウォルマート・ヘルス

多くの米国人にとって生活の中心であり、全てが安く手に入るウォルマートでプライマリーケアや歯科、眼科などの身近な医療サービスが受けられるようになることは大きな意味を持つのではないでしょうか。余談ですが、米国の民間健康保険では、医療と歯科、眼科が別々になっていることが通常なのでウォルマート・ヘルスが提供するワンパッケージのプランは大変分かりやすくうつるのではないかと思います。

また、ウォルマート・ヘルスは21年に遠隔診療サービスを提供する会社であるMeMDを買収したと発表しました

この買収は、ウォルマート・ヘルスが緊急医療、行動医療、プライマリーケアなどのバーチャルケアへのアクセスを全米に提供することで、対面式のウォルマート・ヘルスセンターを補完することが狙いだということです。

同社のヘルス&ウェルネス担当のエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントであるシェリル ペガス博士も「今日、人々は医療ケアへのオムニチャネル・アクセス(リアルとネットの隔てのない接続)を期待しており、ウォルマート・ヘルス社のケア戦略にテレヘルス(遠隔診療)を加えることで、対面およびデジタルによる幅広いケアを提供することができます」と述べています

医療業界にもディスラプションが来るか

Markets and Marketsが発表した23年の最新レポートによると、米国のデジタルヘルスケア市場は、22年時点で3946億ドル(およそ50兆8000億円)で、27年までには9745億ドル(およそ125兆円)の規模に達すると予測されており、CAGR(年平均成長率)は19.8%にものぼるとされています。

この急成長の背景には、コロナによる電子処方箋の浸透や、オンラインでの遠隔診療のような技術の向上、デジタルヘルスサービスや製品を提供する医療機関の増加があるとされています。また、糖尿病や肥満など、常時監視と長期的なケアを必要とする慢性疾患が進んでいることも要因となっています。このため、患者の状態管理を支援するデジタルヘルスケアソリューションに対する需要が高まっているのです。

アマゾンやウォルマートなどの大手小売りが独自の強みとノウハウを生かしてついに本格参入した米国の医療業界。今まで大きなビジネスモデルの変革がない産業ではありましたが、大型買収やテクノロジーの革新により、23年はついに医療業界にもディスラプション(破壊的な革命)が起きるかもしれません。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2301/23/news024.html

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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