アメリカは多様な文化が混在する国であり、さまざまな特徴を持った人々の中から自社の企業風土に適した優秀な人材を採用するため、企業によって独自の様々な採用プロセスが存在しています。
そこで、今回から複数回に渡り、アメリカの有名企業の採用事情をご紹介したいと思います。
第一回目はAmazon(アマゾン)に注目し、同社の採用フローや面接で使用される『STARメソッド』についてご説明します!
日本でもおなじみのアマゾンは、1995年に創業された世界最大級のECサイトです。雑貨、家電製品から自動車に至るまで、あらゆる商品を提供するECプラットフォームを軸として、会員向けに映画・テレビ番組・音楽・書籍といった幅広いサービスを提供するサブスクリプションサービスの「アマゾンプライム」も特徴です。また、AWS(Amazon Web Services)やKindle、Echoなどの周辺事業も拡大し続けており、GAFAMの一角として強い存在感を持っています。
アマゾンの採用プロセスは、応募する職種により異なりますが、基本的には以下のような流れになっています。
それでは、具体的なステップについてそれぞれ見ていきましょう。
アマゾンに興味を持った求職者は、アマゾンの採用ページにアクセスしてオンラインで応募を行います。登録すると、アマゾンの求人情報や採用プロセスについての情報を見ることができるようになります。また、求職者はこの時点で応募する職種を選択します。必要に応じて職務経歴書、履歴書、カバーレター、推薦状などの提出も求められる場合があります。
アマゾンの採用プロセスにおいて最も重要なステップ と言われているのが、オンラインアセスメントです。オンラインアセスメントの内容は応募する職種ごとに異なりますが、応募者が募集した職種に求められるスキルや特性に必要な要件を満たしているかどうかを判断するために設計されています。
例えば、管理職に応募した候補者に対するアセスメントでは、リーダーシップ原則やマネジメントスタイルについての設問が含まれることがあります。一方、ソフトウェアエンジニアの候補者には、アルゴリズムの問題や、コーディングの実際の問題解決力を測定する課題が出されることがあります。
また、アマゾンでは未経験者や異業種からの転職者にも積極的にチャンスを提供しているため、経験やスキルに自信がない人でも、チャレンジしてみることができるようなアセスメントを用意しています。例えば、カスタマーサービスの職種に応募する場合は、対人スキルや問題解決力を測定する課題が出されることがあります。また、フルフィルメントセンターの作業員に応募する場合は、作業の実際の流れをシミュレートした課題が出されることがあります。
電話面接は少なくとも1回、場合によっては4回受ける必要があります。所要時間は1回45~60分で、同じ日に2回行われることはありません。リクルーター、人事担当者、採用担当者、将来の同僚など、さまざまな人と話をすることになります。
面接の前には、自分自身の成功と失敗をアマゾンのリーダーシップの原則に照らして考え、後述するSTARメソッドを使ってどのように話すか計画を立てて対策をすることが推奨されています。自分の専門性をアピールする具体的な事例を用意し、リスクを取って成功 / 失敗し、その過程で成長したことを示すことが重要です。なぜなら、アマゾンが最も成功したプログラムのいくつかは失敗したプロジェクトに根ざしており、最も重要なのは、その努力から何を学ぶかであるとされているためです。
最後のステップが、対面面接です。
この時に使われるアマゾン独自の面接技法が「STARメソッド」です。
STARメソッドは、面接官が求める情報を整理して伝えるための手法で、以下の4つの要素で構成されます。
SITUATION(状況):自身が置かれた状況や仕事内容を説明する。
TASK(タスク):自身が達成しなければならなかった目標を説明する。
ACTION(アクション):自身がどのような行動をとったのかを説明する。
RESULT(結果):自身の行動の結果を説明する。
STARメソッドを使うことで、その人がある状況に置かれた時、どのような目標を設定し、どのような行動をとり、その結果どうなったのかを具体的に解き明かすことができるようになります。
このことで、応募者側は面接官に自分のスキルや能力を効果的に伝えることができ、面接官側は応募者の思考プロセスや問題解決能力を深く理解することができるため、適切な採用の決定を下すことができるとされています。
アマゾンのHP上で公開されている面接時の質問の具体例をご紹介します。ぜひみなさんもご自身の経験に照らし合わせて、回答を考えてみてください。
・解決策がいくつもある問題に直面したときのことを教えてください。その問題は何でしたか、そしてどのように行動方針を決定しましたか?その選択の結果はどうなりましたか?
・リスクを冒したり、間違いを犯したり、失敗したりしたのはどんなときでしたか?そのとき、あなたはどのように対応し、その経験からどのように成長しましたか?
・あなたがプロジェクトで主導的な役割を果たした時のことを説明してください。
・特定のプロジェクトにおいて、集団のモチベーションを高めたり、協力を促したりする必要があったとき、あなたはどうしましたか?
・あなたはどのようにデータを活用して戦略を立てましたか?
いかがでしたか?
自社に必要な人物像を徹底的に分析し、独自の面接技法を採用するアマゾン。このような確固たる採用基準を持つからこそ、世界中から優秀な人物が集まり成長し続けることができるのでしょう。
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AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
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