みなさんは「デュープ」という言葉をご存知でしょうか。米国のスラングで、Duplicate(複製する)という単語から派生している言葉で、あるオリジナル商品にとても似た他社の商品を指します。
規制対象になっているCounterfeit (偽物)と異なり、有名な会社のロゴをまねて消費者をだます目的で作られたものではなく、デザイン全体を複製したような作りになっているのが特徴です。オリジナル商品と比べると半額以下で買えるものもあり、Z世代を中心に「#Dupe」というハッシュタグで、現在TikTokなどで大きな話題になっています。
例えば、ヨガパンツやランニングウェアなどのアスレジャーアパレルで圧倒的ブランド力を持つルルレモンですが、ルルレモンのヒット商品であるヨガパンツは、定価約100ドルで売られており、普段使いとしては少々高額に感じる人が多いのも事実です。
そこで、アマゾンで別のレギンスを見てみると、全く同じようなデザインのヨガパンツが28.99ドルで売られています。レビューの数も内容もポジティブなものが多く、中には、「ルルレモンのデュープと聞いて買ったけど、ルルレモンより良いと思う」というようなコメントもあります。
Amazonの商品ページに付いている実際のコメントのひとつをご紹介したいと思います。
実際のルルレモンの商品は持っていないので比較することはできませんが、この商品がルルレモンのデュープだというレビューを見たので試してみたくなり購入しました。結果から言うと、すでにもう一足買ってしまったほど気に入りました。ルルレモンやアスレタは超高価ですが、このレギンスに出会えて本当によかったです。費用対効果が高く、次回作を見たらまた買ってしまうかもしれません。一度は履いてみてください、損はしません。私は基本的にレギンスで暮らしているので、費用面でも機能面でもこの商品は完璧でした。このレギンスは間違いなく私の新しいお気に入りです!
このように、デュープ商品であることが購入のきっかけであることを堂々と公表しています。
TikTokでは、双子の女性ティックトッカーがルルレモンのレギンスとデュープ商品をそれぞれ着て、比較しているビデオもバズっています。
イタリアの皮メーカーであるゴールデングースはブランドスニーカーのメーカーとして有名です。横についたスターマークやわざと汚れたデザインが特徴的ですが、定価は安くても600ドル(8万円以上)ほど。
そこで、ファッションブロガーなどが、Golden Goose Dupe List(ゴールデングースのデュープスニーカーおすすめリスト)を記事にしています。どのデュープも定価は100ドルほどでオリジナルと比較すると気軽に購入できる価格帯になっています。
このように、デュープ商品を着ることは、偽のブランドバッグを持つのとは異なり、米国社会ではインフルエンサーやマイクロインフルエンサーが推奨するような市民権を得た行為になっているのです。
では、オリジナル商品を作っているルルレモンなどのブランドはこのようなデュープの流行をそのまま見過ごしているのでしょうか。このままではブランドのダイリューション(希薄化)が起きる可能性があるため、もちろんそうはいきません。
そこでルルレモンが5月上旬に行ったマーケティング施策が、「ルルレモンのデュープ商品を店舗に持ってきてくれたら、ルルレモンの本物商品と交換する」というDupe Swap(デュープ・スワップ)という驚きのイベントです。
これは、LAの中心に位置するショッピングモールのポップアップの店舗でのみ実施されたイベントですが、どのようなもくろみがあったのでしょうか。
このポップアップイベントの期間中、来場者は「デュープ」レギンスをルルレモンの定番商品である、「アラインレギンス」と交換することが可能で、交換の条件は、持ってくるレギンスがルルレモン以外のものであること、そしてゲスト1人につき1枚までということです。
同社のチーフ・ブランド・オフィサーであるニッキー・ノイバーガーは、アラインレギンスのユニークな品質と肌触りをアピールし、「アラインレギンスの肌触りと品質は、他の追随を許さないものです。履いたことがある人なら違いが分かると思いますが、そうでない人は分かりません。だから私たちはデュープ・スワップをやっているのです」と述べ、正規品がデュープ品にはかなわない品質であることを強調しました。
交換されたデュープ製品はすべて、提携先を通じてリサイクルするとのことで、サステナビリティも考慮したマーケティングの取り組みになっています。
以前は、コピー商品を見つけることは、高級ブランドへの親近感を得る方法として行われており、決してソーシャルメディアなどで「クールなこと」として扱われるものではありませんでした。
しかし、今ではデュープ商品を持つことは皆に堂々と自慢するようなことになってきていると、ノースウェスタン大学のマーケティング教授であるジャクリーン・バブ氏は、CNNの取材で述べています。
コストコンシャス(費用対効果に対して敏感)で、ファストファッションに慣れているZ世代の支持を得るためには、品質の違いを理解してもらうためのきっかけ作りが大事なのだということです。
このルルレモンのアプローチのように、デュープ商品を購入する層にまずは店舗に来てもらい、正規品との質の違いを実感してもらうイベントを実施することは、施策として訴求力も話題性も多いにあるのではないでしょうか。
このように、デュープカルチャーを逆手にとってファンを増やすブランド戦略に使うルルレモンのようなブランドが今後増えるかもしれません。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2305/30/news112.html
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
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メンバー数:17名(2021年9月現在)
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2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
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