ぼーっと生きてちゃダメ　シリコンバレーのAI起業家が語るリスキリング術

米シリコンバレーを拠点にAI（人工知能）技術関連サービスを手掛けるパロアルトインサイト最高経営責任者（CEO）の石角友愛さん。16歳で単身渡米、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後にグーグルなどで活躍してきた。AI時代に突入する中、どのようにスキルを身につければいいのか、今注目のAIビジネスデザイナーに聞いた。

｢模範解答」人間、20ドルのチャットGPTが代替

――チャットGPTなど生成AIが登場し、従来の仕事のやり方も大きく変わると言われますが。

技術職、非技術職を問わず、仕事のやり方は根底から変わると思います。チャットGPTは、プロンプトと呼ばれる質問文を入力すると、まるで人間のように自然でわかりやすい文章を出力してくれます。それだけだと、コンテンツを書く仕事が変わるぐらいに思えますが、生成 AI はテキストだけではなく、音声や動画などあらゆるデータに対応してくれるマルチモーダルなAI です。例えば1分30秒のこんな動画を編集してよと、要件を整理してテキストで指示するだけで、アッという間に動画を編集してしまう。米国ではチャットGPT関連のアプリが次々開発されています。これは編集にまつわる仕事の一例ですが、あらゆる分野の仕事がAIで変わります。

――エンジニアや営業、事務などホワイトカラー分野の仕事も変わりそうですね。

GAFAM（グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト）が大規模なリストラを行っていますが、そこにもAIの影響があるかもしれません。エンジニアでも、営業や事務でも『模範解答』しか出せない人であれば、月額20㌦のチャットGPTで代替してもいいかな、と思われてしまうかもしれませんね。模範解答が悪いというわけではないですが、決まり切った仕事を指示されたままに処理するビジネスパーソンを高額報酬で雇う必要はないと判断する人も増えると思います。

――日本の企業人は「模範解答」タイプが少なくありません。上からの指示通りに真面目に仕事をこなすだけでは、ビジネス社会に生き残れないわけですか。

生き残れないとまで思えませんが、キャリアアップは今より難しくなるかもしれません。私も様々な人と仕事をやっていますが、この文章はチャットGPTを使って書いた文章かなと見抜く目を持つようになってきました。一方でこの文章は、様々な経験に基づいて、独自性があって、響く、1週間後も覚えているモノもあります。当然、実際のビジネスでは後者の方が採用されるでしょうね。

米国では4年に1回はリスキル

――AI時代を生きる基本的な姿勢とは何でしょうか。

やはり、ぼーっと生きていてはダメだと思います。見抜く力、読解力を養う必要があります。 常に現場で意識しながら経験を積み重ね、ここは良いけど、あれはどうかなと考える。クリティカルシンキングをしながら、客観的な視点も大事にして、うまく言語化できないと相手に響かなくなります。これは優秀なリーダーであれば、すでに実践していることだと思いますが、彼らはAIを活用することで生産性がさらに上がるでしょう。一方で、ぼーっと生きていては、存在感が一段と薄くなります。教科書通りの情報であれば、チャットGPTに聞けばいいわけですから。

――AI時代にはどんなスキルを手に入れればいいのでしょうか。

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