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アマゾンの無料返品サービス、「文房具店」と提携するやむを得ない事情 – ITmedia寄稿記事掲載

2023/07/10 メディア掲載実績, ITメディア 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

アマゾンの無料返品サービス、「文房具店」と提携するやむを得ない事情 – ITmedia寄稿記事掲載

以前、『アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?』という記事を書き大きな反響がありました。同記事では、顧客から返品の申し出があった場合に返金のみを行い、商品はそのまま顧客の手元に保管してもらうアマゾンの「Keep it」という取り組みを紹介しました。これは、商品回収にかかる送料や、検品・再入荷などにかかるコストがいかに高くつくかという事情を反映した事例といえます。

このように返品に関して試行錯誤を繰り返すアマゾンですが、6月末にさらに新しい取り組みを発表しました。

近い将来、顧客が返品したい商品を「箱なし、ラベルなし」で、文房具の大手小売チェーン「ステープルズ」に預けられるようにするというものです。

ステープルズ 公式Webサイト

なぜ文房具店で返品可能に?

アマゾンでは既に傘下のスーパーマーケットである「ホールフーズ」での返品受付けや、提携店舗先である衣料品などを販売する小売り大手「コールズ」での返品受付けを行っているため、ステープルズとの提携は、その延長線上にある取り組みといえます。

アマゾンによると、今回の提携により顧客の大半は居住地から半径5マイル(約8キロメートル)以内に少なくとも1カ所、返品用のドロップオフ・ポイントを持つことになるとしています。

今回のステープルズとの提携は、パンデミックの際に高騰した返品コストが背景にあるようです。アマゾンの北米事業が昨年赤字となったことを受け、その返品コストを下げるために社内のチームが何年もかけて取り組んできた結果、実現されたといわれています。

実際にアマゾンの物流コストは2019年から22年にかけて843億ドル(約12.1兆円)と2倍以上に膨れ上がっており、その一部を占める返品コストを抑えたい事情がうかがえます。ある報道によると、北米市場においてアマゾンに返品することは、最初に顧客に商品を届けるよりも会社にとってかなり高くつくといいます。

返品コストが高騰する理由

返品コストが高騰する理由の一つとして、UPS(ユナイテッドパーセルサービス:アメリカの大手民間配送企業)との提携関係が挙げられます。UPSはアメリカ全土で5500以上もの店舗を持ち、アマゾンの返品をドロップするだけの場所も含めると、9000以上の拠点を持つといわれています。

その数は前述のアマゾン直営店舗であるホールフーズ店舗数(約500店舗)、提携先のコールズ(約1000店舗)などの店舗数の合計を大きく上回っており、家の近くにあるロケーションで気軽に返品をしたいと考える消費者の目からは、UPSでの返品が一番便利なのです。

実際に私がアメリカに住んでいる上での感覚としても、コールズやホールフーズ、ステープルズなどは大きな街に1店舗あるかないかというイメージですが、UPSは必ずどんな街にもあり、大きな街であれば複数の店舗があります。私自身もその理由から、アマゾンに返品するときは家の近所にあるUPSストアにドロップオフすることが多いのです。

しかしここ数年、アマゾンとUPSの関係は悪化の一途をたどっています。まずアマゾン側は、独自の物流ネットワークを構築し、高い物流コストの原因となっているUPSへの依存を軽減する動きを見せています。

アマゾンとUPSの関係性は悪化(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

この動きを受け、大きな収益源であったアマゾンとの物流ビジネスが減ることを見込んだUPSも対応をとっています。消費者がUPSの拠点でアマゾン商品の返品を行う場合には、返品受付け作業のコストをアマゾンに毎回請求しています。

店舗数の多さを強みに、アマゾンの提携施設がない地域に住む消費者がアマゾンへの返品を行う場合には、これからもUPSの店舗を利用するしかないという状況を想定しての動きでしょう。(ちなみに消費者側も、ホールフーズなどアマゾン直営店舗で返品をする分には無料ですが、UPS店舗で返品をする場合は、1ドルのコストが発生します)。

アマゾンはここ数年、AmazonGoなどの実店舗の展開に対して消極的なため、直営店舗でのEC商品の返品は拡張性がありません。そこで今後期待されるのが、コールズやステープルズなどの小売業者との提携だというわけです。

それでは、小売業者からみた場合、アマゾンの返品を無料で受け付けるメリットはどこにあるのでしょうか。そのキーワードは、「来店促進」と「新規顧客獲得」にあります。

双方の利害が合致

コールズの前CEOのミシェル・ガス氏は、21年に「アマゾンとの提携がコールズ店舗への来店促進に貢献している」と評価する旨の発言をしています。アマゾンの商品を返品しに来た顧客が、コールズで他の商品を購入することもあるため、この関係によってコールズは20年に200万人の新規顧客を獲得したと述べました。

実際にコールズの業績を見ると、5月最新の決算発表では「驚きの利益を出し株価が7%アップした」と報道されています。

決算発表の際、コールズの現CEOのトム・キングスベリー氏とCFOのジル・ティム氏は、同社が顧客を取り戻し、新規顧客を獲得するために行った改革を強調しています。具体的にはペット用品やインテリア用品などの商品カテゴリーを拡大しており、「買い物客が店舗に足を踏み入れるたびに、”何か新しいもの、何か違うもの、ギフトに最適なもの、何か違う外観 “を目にするようになった」と述べました。

このことから、店舗を持つ小売業者は常に新しい顧客を獲得するための施策を打ち出さなければならないことが分かります。広告やロイヤリティプログラム、クーポンなどの従来のマーケティングの手法にプラスして、「アマゾンの返品を無料で受け付ける窓口になる」ということ自体が戦略として位置付けています。

他にも、店舗への来店促進や新規顧客獲得をするための面白い試みとして、先日ルルレモンの事例を紹介しました。中~高価格帯のスポーツブランドを展開するルルレモンが、あえて自分たちが作る商品とそっくりなコピー商品(デュープ)を持ってきた顧客に対して、「ルルレモンの正規商品をプレゼントする」という驚きのキャンペーンを行うことで、実店舗への来店や品質の違いの理解を促すきっかけ作りを行っているという事例です。

このように小売業者の「色々な形で来店促進と新規顧客獲得をし続けなければならない」という使命と、アマゾンが慢性的に抱える「返品コストの削減」という双方の狙いが合致した形こそが、『パートナーリテーラーでの無料返品受付』なのだということが分かります。

アマゾンは今後も同様の提携先を拡大することで、UPSとの関係をさらに見直すことが想定されます。消費者にとっては、アマゾンの返品ができる店舗数や店舗タイプが増えることは利便性向上につながるため、より良い形で物流コスト削減を実現することに期待したいと思います。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2307/10/news046.html

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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