Meta AIの挑戦: AIは脳内で考えていることを視覚化できるか 今週のテーマ:AI開発 私たちの脳は、毎日の生活の中で無数の画像や情報を処理しており、こうした情報が記憶や感情、行動の基盤となっています。このような脳内のイメージを実際に視覚化することは、長い間科学者達にとって挑戦すべき課題として存在してきましたが、AI技術の進化により、この挑戦に新しい光が当てられるようになりました。本記事では、Meta社のブログより、AIを使用して脳の視覚的表現をデコード(解読)し、それを視覚化する同社の試みをご紹介します。 💡 この記事から得られる3つのナレッジ ・脳の視覚的表現とは ・脳内を再現するMeta社の技術概要 ・研究の意義や今後の展望 💡 この記事の元になった文献 今回のディスカッション対象の記事をご紹介します。 タイトル:Towards a Real-Time Decoding of Images from Brain Activity 機関:Meta AI URL:https://ai.meta.com/blog/brain-ai-image-decoding-meg-magnetoencephalography/ 目次 脳の視覚的表現とは Metaの研究の概要 技術の詳細 研究の成果 おわりに 脳の視覚的表現とは 脳は、外部からの刺激を受け取り、それを情報として処理し、私たちが認識するイメージや感覚を作り出します。このプロセスは「視覚的表現」と呼ばれ、脳の神経細胞や回路の活動によって行われていますが、非常に複雑なため人工的な再現が難しいとされています。 Metaの研究の概要 そのような中、Metaは、脳の視覚的表現の展開をデコードするためのAIシステムを開発したと発表しました。このシステムは、非侵襲的(生体へ障害を与えない)な脳画像技術であるMEG(Magnetoencephalography)を使用して、脳の活動から知覚される画像をリアルタイムで再構築することができるとされています1。Metaの研究者は4人の患者(女性2人、平均年齢23歳)の12セッションにわたる6万3,000件のMEGデータ結果を利用して深層学習アルゴリズムを訓練することで、患者が見た画像を再現しました。 技術の詳細 Metaは、MEG信号から音声認識をデコードするために、Thingsという学術研究者のコンソーシアムによってリリースされた訓練済みのアーキテクチャを活用し、画像エンコーダ、脳エンコーダ、および画像デコーダという3部構成のシステムを開発しました。 それぞれの役割は以下の通りです。 画像エンコーダ:画像をAIが解析できる形式に変換したデータセットを構築する 脳エンコーダ:MEG信号を画像エンコーダで制作した画像データと同期させる 画像デコーダ:脳の表現を基に、もっともらしい画像を生成する MEGの記録は画像の深層表現に連続的に同期され、各瞬間の画像生成を条件付けることができる。 研究の成果 この研究により、AIが人間の脳のデータを読み込みデコードすることで、人々が見た画像を再現することができることが示されました。これは、脳の視覚的表現を解明する上で、科学的にも重要なステップであると言えるでしょう。また、画像生成AIは、fMRI(MRI装置を使って無害に脳活動を調べる方法)のデータから人々が見ているものを再現する上でも有力なツールとなっています。 Meta社のブログには、AIにより再現された以下のような画像がいくつか紹介されています。 ご覧の通り、生成された画像は不完全なままではあるものの、物体のカテゴリ(動物なのか、食べ物なのか、どのような色か)といった高レベルの特徴を適切に捉えていることがわかります。 一方で、生成された画像内のオブジェクトの配置や向きの精度は今ひとつだと言えるでしょう。 おわりに MEGとAIの組み合わせによるこの研究は、脳の複雑な活動を理解し、それを視覚化する新たな手法として注目に値するものです。 この技術の素晴らしいところは、脳の研究だけでなく、医療や技術の分野において多くの応用の可能性を持っているところです。例えば、脳を損傷して話す能力を失った人々の意思疎通に役立てたり、事故現場を見た人の脳内を再現することで現場の状況の解明や犯人の逮捕に役立つ可能性もあるでしょう。 プライバシーや倫理的な部分で議論すべき問題はもちろんありますが、まるでSFの世界のような出来事がすぐそこまで来ているのではないかとわくわくしますね。 弊社では、AI活用に関するご相談を受け付けています。もしAIについてお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせはこちらから。https://www.paloaltoinsight.com/contact/…
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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