【後編】

自分も部下も「ご機嫌」にするマネジメント手法とは

澤円氏対談 – 日経クロストレンド連載

変化の大きい「AI時代」を生き抜くには何が必要なのか。米シリコンバレー発のAI企業パロアルトインサイトCEOの石角友愛氏が、ビジネスの第一線で活躍する経営者や専門家との対談を通して「AI時代を生き抜く」ヒントを提示する。元・日本マイクロソフト業務執行役員で、“プレゼンテーションの神”として知られる澤円氏との対談の後編は、企業や個人のAI活用方法、挑戦に向けた活力を高める考え方などについて議論した。（対談は2024年5月29日）

AIは同じことを何回聞いても嫌な顔をしない、抜群の壁打ち相手

石角友愛氏（以下、石角）　澤さんは著書『メタ思考』（大和書房）の中で、自分を客観視することの重要性を説いています。変化の激しいこの生成AI（人工知能）時代だからこそ、自分を俯瞰（ふかん）して、やりたいことを理解することが大事だと感じます。

澤円氏（以下、澤）　そうですね。自分を知ってやりたいことが見えてきたとき、AIはアイデアの壁打ち相手として非常に役に立ちます。問いかけに対して様々な角度から回答してくれるので、やりとりの中で気づきが得られることが多い。しかも人間と違って何百回同じことを聞いても嫌な顔一つしないですしね。

石角　それがいいですよね。仕事で細かな疑問があっても、取引先には聞きにくいし、上司には使えない人材だと思われたくなくて、結局聞けないというケースは珍しくありません。AIなら立場や時間を気にせず、聞きたいときにすぐに聞けて、即座に回答してくれるのですっきりします。思考を整理したり、言語化したりするツールとして最適です。

澤　それが自然言語でできるというのも魅力ですよね。私のようにITに関わってきた人間にとって、ソフトウエアの使い方を学ばなくても、コンピューター言語を知らなくても、日常で使う言葉で投げかければすぐに何かしらのアウトプットが得られるというのは夢のような世界です。それが今、現実になりつつある。

石角　人と会話するようにやりとりができるのは大きな進歩です。その上で、ChatGPT（チャットGPT）の登場以降に私が感じているのは、AIの活用で課題解決の道筋がつけやすくなった分、やりとりの前提となる課題を設定する能力が重要になってきているということです。

澤　まさにその通りです。「課題設定」の難しさは、時代と共に変わってきました。私がエバンジェリストを務める日立製作所で聞いた話をしましょう。

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