Amazonは、デバイス事業において数多くの成功を収めてきましたが、その背後には「ダウンストリームインパクト(DSI)」という独自の経済指標が存在します。この指標により、Echoやその他のデバイスが長期間にわたり巨額の損失を被りながらも継続的な開発が可能となっていました。しかし、現在のCEOであるアンディ・ジャシー氏は、このDSIに頼りすぎたビジネスモデルを見直し、新たな収益化戦略を模索しています。
「ダウンストリームインパクト(DSI)」は、デバイスを購入した顧客がその後Amazonのエコシステム内でどの程度消費するかを基に、製品やサービスの経済的価値を算出するものです。例えば、Kindleを購入した顧客が電子書籍を購入することで、デバイス事業だけでなく書籍事業にも利益がもたらされるという考え方を指します。この指標は、KindleやFire TVのような収益性の高いデバイスには適していましたが、Echoのようなデバイスには必ずしも適していませんでした。Echoは一般的に製造コストを下回る価格で販売され、DSIを用いて内部での価値を正当化していたからです。そのため、このシステムは収益の二重計上を可能にし、EchoとFire TVの両方を購入した顧客のプライム会員収益が両方のデバイスチームによって主張されるという問題も生じていました。
アンディ・ジャシー氏がCEOに就任した後、Amazonは全ての事業ラインの収益性を見直しました。特に注目されたのが、巨額の損失を出していたデバイス事業です。ジャシー氏は、DSIに頼らずに収益を上げる方法を模索するようデバイステームに指示しました。これにより、新規デバイスの開発が一部停止され、既存の製品に新たな収益源を見出す努力が求められたのです。
具体的には、AlexaとEchoの収益化に向けた取り組みが進められています。Alexaの新しいバージョンである「Remarkable Alexa」の開発が進行中であり、これは音声操作でスマートホームデバイスをよりシームレスにコントロールできる機能や、生成AIを統合した新技術を搭載する予定です。この新サービスは、月額料金を設定して収益を上げることを目指しています。
Amazonのデバイス事業は、DSIという独自の指標によって支えられてきましたが、アンディ・ジャシーCEOの指導の下、より直接的な収益化戦略にシフトしています。これらの変革は、ビジネス全体に大きな影響を与え、Amazonの持続的な成長を支える重要な要素となるでしょう。
参考:https://www.wsj.com/tech/amazon-alexa-devices-echo-losses-strategy-25f2581a |