ニューヨーク市の自転車シェアプログラム「Citi Bike」は、通勤や外出を手軽にするためのシステムとして広く利用されています。しかし、このシステムを利用して毎月6,000ドルもの収入を得ている人々が存在することをご存知でしょうか?特定のユーザーたちは、このプログラムのリワードシステムを巧みに活用し収益を上げているのです。
Citi Bikeはニューヨーク市、ホーボーケン、ジャージーシティを含む広範囲で利用されている自転車シェアリングシステムです。Lyftが運営するこのサービスは、27,000台以上の自転車を提供しており、年間220ドルのサブスクリプションで無制限に利用できます。しかし、使用する場所や時間帯によっては、駅が満杯で自転車が返せない、または自転車が不足していて借りられないといった問題が発生することもあります。
こうした不均衡を解消するためにCiti Bikeは、「Bike Angels」というプログラムを2016年に導入しました。このプログラムでは、ユーザーが自転車を満杯のステーションから借り、空いているステーションに返すことでポイントが付与されます。例えば、満杯のステーションから自転車を借りると最大で4ポイント、空いているステーションに返すとさらに4ポイントが加算されます。さらに、24時間以内に4台以上の自転車を移動させると、ポイントが3倍に増える仕組みがあり、Lyftはこのポイントに基づいて報酬を支払います。ポイントは1ポイントあたり20セントで換算され、理想的な条件下では1回の移動で最大4.80ドルを稼ぐことが可能です。
このプログラムの隙間を利用して大きな利益を生み出す方法を見つけたのが、「ハッスラー」たちです。彼らは、Lyftのアルゴリズムを利用し、効率的に自転車を移動させて収益を上げる方法を編み出しました。ハッスラーたちは、都市の特定のエリアにある満杯のステーションから自転車を1ブロック移動させ、15分後に元のステーションに戻すという手法を使っています。この動作を繰り返すことで、アルゴリズムを操作し、報酬を最大化するのです。
このような行動に対して、一部では彼らの行動を「詐欺」だと非難する投稿も見られます。しかしハッスラーたちは「アルゴリズムに従ってポイントを稼いでいるだけだ」と主張し、自らの行為を擁護しています。またオックスフォード大学の哲学者ブレント・ミッテルシュタット教授は、ハッスラーの行為はLyftの負担軽減に繋がっており、その報酬は妥当だとする見解を示しているのです。特にギグエコノミーにおいては、こうしたアルゴリズムを利用することで労働者が少しでも力を取り戻すことは重要だと彼は指摘しています。
ビジネスや日常生活において、アルゴリズムやシステムの隙間を見つけ、そこに価値を見出す能力は、特にギグエコノミーの労働者にとって重要なスキルとなりつつあります。このケースは、テクノロジーと人間の働き方の交差点における興味深い事例であり、今後も注目すべきテーマといえるでしょう。
参考:https://www.nytimes.com/2024/09/19/nyregion/citi-bike-scam-nyc.html |