アメリカの高等教育システムは、長らく世界中から羨望の目で見られてきました。しかし、近年では急速に衰退しつつあります。多くの大学が財政難に苦しみ閉鎖に追い込まれ、学費の高騰によって私立大学への投資価値が疑問視されているのです。しかしこの厳しい状況にあっても、ノースイースタン大学は新しいアプローチで生き残りを図っています。その手法はまさに、ウォール街で培われた「企業買収と統合」の手法です。
かつてはボストンの通学型大学として知られていたノースイースタン大学は、世界規模の大学へと成長するために競争力を高めようとしています。その手法は他の大学が避けてきた、合併や買収を通じた成長戦略です。2023年には、ニューヨーク市のメリーマウント・マンハッタン・カレッジを買収し、14のキャンパスに10,000,000平方フィート以上の不動産を所有することになりました。
この買収の効果はすぐに現れました。2019年以降、入学者数は15%以上増加し、年間の志願者数は100,000人に迫り、同校の合格率は6%以下という、アイビーリーグに匹敵するレベルにまで達しました。さらに2023年の運営収益は46%も増加し、年間20億ドルを超える収益を達成しました。これは、同じ信用格付けを持つ私立大学の中央値の8倍以上という驚異的な成長です。
急成長の一方で、学生生活には様々な問題が生じています。特にボストンキャンパスでは収容力不足が深刻で、新入生はホテルや遠隔地のキャンパスに送られるケースも増えています。またカリフォルニア州のミルズ・カレッジを買収した際には、既存の学生が卒業要件の変更により余計な学期を過ごす羽目になったり、専攻を変更せざるを得なかったという事例もあります。このように急成長には課題も伴っており、学生生活への影響やキャンパスの過密化といった問題が浮上しているのです。
ノースイースタン大学の例は、変化に適応し、ビジネス的な視点を持つことで、財政難に直面する大学が未来を切り開く道を示しているといえるでしょう。課題も多くありますが、将来的には私立大学全体がこのような成長モデルを追求し、合併を通じて生き残りを図る時代が来るかもしれません。
参考:https://www.bloomberg.com/news/features/2024-09-25/northeastern-university-uses-wall-street-playbook-to-rival-ivy-league-admissions |