2021年1月6日、アメリカ合衆国議会議事堂で起こった暴動事件。この衝撃的な出来事は、民主主義に対する攻撃として広く非難されました。当時、議事堂警察やワシントンD.C.警察の警察官150人以上が負傷し、多くが長期的なトラウマに苦しんでいます。しかし、トランプ大統領が暴動関連者約1,600人への大規模な恩赦を発表したことで、被害を受けた警察官たちは再び傷つき、憤りを感じています。
元議事堂警察のアキリーノ・A・ゴネル氏は、月曜夜から火曜朝にかけて9回の通知を受けたと言います。同氏は暴動中に負傷し、後にその怪我が原因で警察を退職しました。ゴネル氏は「これは正義の失敗であり、民主主義を守るため命を懸けた人々への裏切りです」と語り、怒りと悲しみをあらわにしました。さらに、暴動当日に負傷した他の警察官たちも「深い失望と抑えきれない憤り」を感じていると述べています。
暴動で命を落とした議事堂警察官ブライアン・D・シックニック氏の兄であるクレイグ・シックニック氏は、この恩赦が家族に新たな傷を与えたと述べています。クレイグ氏は、弟の功績を称える記念品を家に飾り、彼の存在を日々感じていると言いますが、今回の恩赦について「民主主義をほぼ失い、今日、それが完全に失われたと感じる」と嘆きました。
今回の恩赦に対し、議会共和党の多くは沈黙を貫きました。例外的に批判の声を上げた議員もいましたが、多くはバイデン元大統領やトランプ大統領による過去の恩赦にも触れ、全体の制度に疑問を投げかける姿勢を見せるにとどまりました。共和党のジョン・チューン上院議員は「私たちは過去ではなく未来を見ている」とコメントし、恩赦が大統領の裁量に基づくものであると主張しました。この発言は、恩赦に反対する警察官や被害者たちにさらなる失望を与えています。
この状況は、アメリカ社会における法と正義、そして民主主義の未来についての議論を深める契機となるでしょう。今後、被害者たちがどのようにこの困難に立ち向かうのか、また政治的な議論がどのように進展するのかが注目されます。
記事元:https://www.nytimes.com/2025/01/21/us/politics/jan-6-pardons-police.html |