AIの進化は近年急速に進んでおり、大規模言語モデル(LLM)や強力なニューラルネットワークが次々と登場しています。しかし、これらの技術が本当に汎用人工知能(AGI)へと繋がるのかについては、多くの議論が交わされています。Metaの最高AI科学者であり、ニューラルネットワークの第一人者であるヤン・ルカン氏は、現在のLLMには根本的な限界があり、AGIの実現には異なるアプローチが必要だと主張しているのです。
現在のLLMは驚異的な言語処理能力を持ち、「翻訳」「文章生成」「質問応答」などで優れた成果を上げています。しかし、ルカン氏はこれらのモデルが本質的に「知能」と呼べるものとは異なると考えています。LLMは、前の単語から次の単語を予測する「オートリグレッシブ(自己回帰)」方式で学習しています。しかし、人間の思考はこのように逐次的なものではなく、全体の計画を立てながら思考を進めます。そのため、LLMでは「ハルシネーション」(幻覚)と呼ばれる誤った情報を生成しやすいという問題があるのです。
ルカン氏は、AIが本当に知能を持つためには、言語だけでなく身体を通じた世界の理解(Embodied Understanding)が必要だと強調しています。人間や動物は、「視覚」「聴覚」「触覚」などの感覚を通じて世界を学び、経験から直感的な知識を獲得します。これが、単なる言語データの学習とは異なる点です。例えば、2歳の子供でもスプーンを持って食事をすることができますが、現在のAIに同じことをさせるのは非常に難しいのが現状です。このような「体験から学ぶ能力」を持つAIこそが、より高度な知能を持つ可能性があるとルカン氏は考えています。
つまり、AGIを実現するにはLLMの発展だけではなく、AIが真に知能を持つためには身体を通じた学習・階層的な計画能力・高度な予測モデルが必要になるということです。また、オープンソースAIの推進が、AIの未来において非常に重要な要素となるという点にも触れています。
AGIが現実味を帯びてきた昨今、どのような形で実現されるのか期待が高まります。
記事元:https://medium.com/@stevecohen_29296/yann-lecun-limits-of-llms-agi-the-future-of-ai-8e103a8398ab |