フランスに本社をおき、スマートウォッチやスマート体重計といった、健康管理デバイスを販売するWithingsは、ラスベガスで開催されたCESで新しいガジェット「U-Scan」を発表しました。このガジェットは健康診断のようにユーザーが尿をカップに入れたりせずに、自宅で毎日排尿の中で、自分のからだに何が起こっているかを追跡できるようにできると言います。 U-Scanは便器に設置するように設計されており、ユーザーは手に触れることなくで尿分析にアクセスできます。尿は、医療現場では日常的に活用されていますが、家庭での健康をモニタリングする用途で利用されることはほとんどありませんでした。 尿には 3,000以上の代謝産物があり、体のバランスと健康状態を即座に把握できると同社は指摘しています。このガジェットが浸透すれば、健康への考え方が今後数年でかなり変わるかもしれませんね。 …
Appleは、クリエイティブなブレインストーミングなどをこれまで以上に簡単に行えるように設計された新しいコラボレーションアプリ「フリーボード(英語版:Freeform)」を発表しました。 iPhone 14、iPad Pro、MacBook Proで最新のOSにアップデートすることで利用可能となり、コンテンツを整理してレイアウトするための柔軟なキャンバスをユーザーに提供します。さまざまなファイルに対応し、FaceTimeなどとのコラボレーション機能も備えているといいます。また、Scribble、描画ツール、シェイプライブラリ、iCloudとの連携などの機能を搭載しており、同じボード上で最大100人までのコラボレーションが可能になります。最大の特徴は書き込めるキャンバスのサイズで、無限に広げられるといいます。メモやブレストをしていて後から追加要素が出てきても、キャンバスを拡張し、いくらでも書き足すことが可能です。これは、リアルな紙では実現できないデジタルならではの機能ですね。 iOSのみの連携となっているため使えるユーザーやシーンは限られてくると思いますが、Appleの純正アプリケーションとして高いセキュリティの無料ツールですので、これからの発展次第では、かなり使えるコラボレーションツールになる可能性を秘めています。iOSの端末をお持ちの方は利用できるのでぜひお試しください。…
UCバークレーの卒業生が2006年に創業したスタートアップのcrunchyroll(クランチーロール)は、海外向けアニメ配信サービスを提供しており、現在全世界で1億2000万人程のユーザー数を誇ります。2021年に、Sonyが10億ドルでAT&Tから買収したことでも話題になりました。 海外でアニメを見るのであれば、Netflixよりクランチーロールが使われることが多いです。Netflixでは人気アニメはシーズン1しか用意されていないことも多いのですが、クランチーロールだと全シーズン揃っており、アニメを見ながら他の視聴者のコメントを読むことができ、YouTube的な視聴方法ができるので楽しく視聴することが出来ます。 また、クランチーロールはアニメ配信の際に機械学習を使っていることでも知られています。同社のブログによると、クランチーロールが配信するアニメの中には、TV放映時代のものもあり高画質ではありません。現代の高画質4KのTV画面やパソコン画面で見る場合、古いアニメをリアルタイム処理して高画質にスケールアップしなければいけません。(画像処理で、スケールアップ問題として知られている領域です)そこでコンテンツがスケールアップされるときに失われてしまう画面の詳細を補正するために、ディープラーニングの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを活用しています。コンテンツが元のソースよりも大きい解像度にスケーリングされるときに、詳細を予測して入力しているとのことです。 海外のアニメ配信というと、アメリカで創業されたFunimationというアニメ配信会社も有名なのですが、実はこちらも2017年にSonyが143万ドルで買収しています。このことから、Sonyは海外向けアニメ配信ビジネスに力を入れていることが伺えますね。…
Surfline社のソフトウェアは、衛星画像、極地の氷、海底の形状、風のパターン、ブイの測定値など、複数のデータソースを取り込み、分析しています。また、人間のサーファーからのフィードバックや、約800台のカメラネットワークからの情報も活用して、小型のサーファーのための予測を行っています。 機械学習がこれまでにサーフィンにもたらした最大の応用例の一つに波浪予測があります。日本は大波で知られていないにもかかわらず、波情報を提供する米サーフラインのチームは、オリンピック初のサーフィン競技会場として釣ヶ崎海岸サーフィンビーチを選ぶことができたのも何十年にもわたる気候データをもとに、熱帯暴風雨の影響で波が大きくなるとチームは予測できたことは素晴らしいことです。…
デジタルノマドという働き方をご存知ですか?単純なリモートワーカーではなく、ノマドのような生活スタイルで、世界中を転々と旅しながらIT関連の仕事をする新しい働き方を追求するIT人材のことを指して言います。 Emergent Research社とMBO Partners社が共同で行っているデジタルノマドに関する調査によると、自らをデジタルノマドと称する米国人の数は、2019年の730万人から2020年には1,090万人へと、49%も増加することがわかりました。 また、デジタルノマドは総じて仕事の満足度(90%)と、収入の満足度(76%)が非常に高く、他の労働者に比べて、より高度な仕事や技術のスキルを持ち、継続的なトレーニングへの取り組みを行っていることもわかっています。 シリコンバレー発のデジタルノマド向け賃貸プラットフォームの「Anyplace」は、ホテルやコリビングスペース、サービスアパートメントといった家具付きの部屋を月単位で借りられる賃貸サービスのマーケットプレイスで、コロナ禍でのニーズ拡大も後押しし世界23カ国70都市まで広がっています。 このようにデジタルノマドの数は増え続けているにもかかわらず、正式なポリシーやプログラムを設けている組織はほとんどありません。今後どのように管理していくかはアメリカでも大変大きな議論になっています。 企業はDX推進を成功させたいのであれば、デジタルノマドが働きやすい環境を整えるだけではなく、データセキュリティやリーガルリスクも理解した上で会社の制度を作る必要があるでしょう。…
シリコンバレーのAIスタートアップで産業用ロボティクスAIを開発しているCovariant AIという企業を紹介いたします。カリフォルニア大学バークレー校のピーター・アビール教授を共同創業者とする同社は、産業用ロボットに自律性を持たせる研究開発をしています。 昨年、世界有数の産業用ロボットサプライヤーであるABBと、AIロボットソリューションを市場に導入するためのパートナーシップを発表したことでも話題になりました。 Covariant AIでは、ロボットが周辺の世界を観察・類推・行動することを可能にする汎用性の高いAIテクノロジー「Covariant brain」を開発しています。この「Covariant brain」は階層型強化学習を実装している点が特徴で、このAIモデルがあることによって、ロボットにとっては複雑で多様なタスクも完遂することが可能なりました。 Covariant AIと、ABBの統合型AIロボットソリューションはすでにオランダのユトレヒトActive Antsで導入されているなど、自律型ロボットが実現が広がっています。 新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業が現状を打破する方法としてロボティクスや、オートメーションに着目しているため、今後は新たな成長分野への進出も期待できるでしょう。…
柔軟な雇用に焦点を当てたジョブサービスプラットフォーム「FlexJobs」 が4月に発表した2,100人を対象にした調査によると、リモートワークのメリットとして、通勤時間の短縮とコスト削減が上位に挙げられています。 実に回答者の3分の1以上は「リモートワークで年間5,000ドル以上の節約ができている」と回答しています。アメリカの雇用契約では企業が交通費を支払わないので、年間5,000ドルのコストセービングは非常に魅力的と感じるでしょう。 一方でGoogleやAppleなどのビッグテック企業ではオフィスの重要性を説いており、今後は週に数回の出社が義務となるハイブリッドモデルになると言われています。 従業員の多くはリモートワークにより満員電車や高速道路での長時間の通勤から解放され、多くの仕事がどこからでもできることを証明してきました。企業が人々をオフィスに戻そうとする動きが、今後リモートワークをニューノーマルとして受け入れた従業員と衝突につながっています。 5月に発表された米国の成人1,000人を対象に行ったアンケート調査によると、39%の若者がリモートワークに対して雇用主が柔軟に対応してくれない場合、「会社を辞めることを検討する」と回答したそうです。これをミレニアル世代とZ世代に限って言うと、数字は49%に跳ね上がり、より若い世代はリモートワークを希望していることがわかります。 ワクチンの普及でアフターコロナの世界が目の前に迫る中、ニューノーマルな働き方を後押しする企業となりそうです。…
GAFAで働くエンジニアお勧めすの新しいブラウザーアプリ「MightyApp(マイティ)」は、まだ社員数10人程度のアーリーステージスタートアップです。 通常、ブラウザを開く際は、GoogleChromeやfirefox、Internet explorerなどパソコン上にアプリケーションをダウンロードして起動するのが一般的になっています。 このサービスのポイントは、クラウド上にあるパワフルなマシンの上でchromeブラウザを操作し、その映像を配信するというシステムを採用している為、ローカルディスクにアプリケーションをダウンロードする必要がないという点です。結果的に、パソコンのメモリーがchromeをダウンロードした際と比べ、10倍以上もセーブでき、かつ処理速度も早くなるということです。 また、もう一つの売りとしてプライバシーを第一優先にすることを掲げており、ブラウザー閲覧履歴を非公開にし、無料のブラウザのようにログインデータの販売はしないことを明言しています。 料金はユーザーへの月額利用モデルを採用するそうで、毎月30ドル程度の利用料を徴収する見込みとのことです。 導入料金が少し高額なのがネックですが、高速化かつプライバシーの保護という点で、こちらのサービスも世の中の不要な広告から脱却されること願う方々に支持される可能性があるでしょう。…
AJL(Algorithmic Justice League)はAIのバイアスについての研究や提唱をしているという団体です。 AJLのFounderのジョイ氏は、MITメディアラボのリサーチャーを務めているコンピュータサイエンティストです。ジョイ氏の実験よると、AIの顔認証技術は黒人よりも白人を3倍見分けやすいといい、メディアでも話題になりました。これは結局人間がAIにデータを学習させていることによるバイアスの問題からきています。 そんなバイアスの中でも特に問題とされている4つの領域が「顔認証技術」「雇用」「住居」「刑事司法」です。 顔認証技術や刑事司法制度はすでに人種的不公平に満ちており、この問題は人間の偏ったデータセットが際立たせているといいます。 今後のAIビジネスにおいては、元データのバイアスをいかに取り除くのかというプロセスも非常に重要になります。バイアスのないデータセットをいかに集めるか、これからAIビジネスを考える方もぜひ意識していただきたいポイントです。…
Andrew Ng(アンドリュー・ング)という方をご存じでしょうか。彼は「100年前に電気の登場ですべての業界が変わったのと同じように、今後数年間にAIが変革しない業界はないだろう」と発言しており、私の講演でもこの一節はよく使っているのでご存じの方もいるかと思います。 彼は、Google Brainの共同創業者で、中国バイドゥの元チーフデータサイエンティストとして活躍した後、現在はスタンフォード大学の教授として活躍しています。 Landing AI はその彼がAndrewが作った会社です。 この会社は主に製造業向けにAI導入を行っており、特に有益なアドバイスをしているMIT Technology Reviewの記事を紹介いたします。 彼はインタビューで「より小さなデータセットと言うとき、あなたが考えているデータサイズはどれくらいですか?」という質問に以下のように述べています。 ”機械学習は非常に多様であるため、万能な答えを出すのは非常に困難です。私は約2億~3億枚の画像がある課題や、10枚の画像とその間のすべての画像がある問題にも取り組んできました。 トレーニングセットのサイズが1万を下回ると、AIの学習方法が切り替わります。これはエンジニアが基本的にすべての例を確認して設計し、決定を下すことができる最低限の値ということです。” 「どれくらいのデータを集めればよいAIが作れるのか?」という本質的な疑問を持っている方には特に有益な記事です。 …
2017年に設立された「Hims」は、当初は薄毛などの問題を抱える男性向けに、家に居ながらにして医師とのオンライン相談や処方箋の配送を受けられるサービスを提供することを目的としています。その後、女性の健康をサポートする事業「Hers」も展開し、独自の電子カルテやオンライン薬局のサービスも加え、2021年には、16億ドルでSPACによりIPOされたとの報道もありました。 創立者でありCEOのアンドリュー・ダダム氏によると、ビジネスの目標は「ヘルスケアシステムへの玄関口になること」だそうです。 サブスクモデルのD2C(Direct to Consumer(自社から消費者に直接サービス提供をするビジネスモデル))というのが同社の特徴で、会員は毎月約20〜30ドルで、24時間365日、医師へのオンライン相談とジェネリック医薬品の処方を受けることができます。 例えば、私の知り合いは3ヶ月に1度、持病の薬の処方箋をもらうためだけに通院していますが、こういったことは全てHims&Hersのようなサービスを利用することで解決されるようになるのではないかと思います。 このような遠隔医療の需要は昨今のコロナ禍で更に伸びていると想像できますが、事実、同社は創業してからの数年で既に300万件近くの遠隔医療相談を実施しており、これは遠隔医療の最大手であるTeladoc Healthが260万件の実績に到達するまでに20年を要したことに比べると凄まじい勢いです。…
Snowflakeはオラクルのデータアーキテクト2名とシリアルアントレプレナー1名で2012年に始めたクラウド上でデータ解析アプリケーションを提供するシリコンバレーの会社です。2020年9月16日にNYSEで上場し、株価はIPO時の$120ドルの2倍以上の$299.93で取引され、投資家がテック系IPOに注目している需要の高まりの証拠だと考えられています。 AWSやGCP、Azure上でサービスを展開していますが大手クラウド3社が類似サービスをどんどん打ち出しており、例えばAWSのRedshiftなどはSnowflakeの競合サービスとなるため競争は激化すると考えられますが、投資の絶対的存在であるWarren BuffettがSnowflakeの投資家だということから考えられるのは、競争激化も想定内でそれを超える大きなマーケットオポチュニティがありそうです。…
Facebookの社名が「Meta」に変更になったことは、世界中で大きな注目を集めました。 Meta社を中心に、各社が力を入れている「メタバース」が次のフロンティアになるのであれば、人気ブランドを持つ会社はそれに合わせて商標をおさえることで、新たな収入を得られる可能性があります。 先日、NIKEが「Swoosh」のロゴが刻印されたスニーカーや衣料品などのデジタル製品を、ビデオゲームなどの仮想世界で販売したいと考えていることを示す商標を出願したことが明らかになりました。 これまでにも、デジタルスニーカーのデザインが数千ドルで販売されるなど、デジタルデザインやアートワークには多くの人々がお金を払っており、著名人がブロックチェーン技術を使って認証されたデジタル収集品であるNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を販売して利益を得ようとする動きもあります。 NIKEが行った今回の商標申請は、現実世界ですでに行っているブランド保護を仮想世界でも同様の形で実現し、コピー商品の登場を防ぐ手段になるとされており、NIKEはメタバース上の「履けないスニーカー」で新たな収益源を手に入れようとしているとも考えられています。…
NETFLIXの韓国ドラマ「Squid Game(イカゲーム)」が世界中で非常に人気を博しています。アメリカでは白いバンズのスリッポンスニーカーがイカゲーム放送開始後に7800%売上増加をしたのですが、それもハロウィンに向けてイカゲームのキャラクターに仮装する人が多いからだとのことです。また、イカゲーム以外でも様々な韓国ドラマがヒットしており、さらにはK-POPの世界的な大ヒットもあり、韓国語を学ぶ人が急増しているといいます。 アメリカのピッツバーグに拠点を置き、語学学習サービスを運営するDuolingoによると、放映後の2週間で韓国語学習のために登録した新規ユーザーが、英国では76%、米国では40%増加したといいます。韓国語を学ぶアクティブユーザーは、現在790万人を超え、ヒンディー語に次ぐ急成長を遂げているといいます。 Duolingoは言語を学ぶ新しいタイプのサービスで、2021年にIPOしたことでも話題になりました。Duolingoは仕事のために語学学習の必要があるという実務的ニーズを持ったユーザーをターゲットにしておらず、デートスキルやため口スキル、マナースキルなど、よりカジュアルな語学を学べることが特徴です。 冒頭で紹介したNETFLIXのようなオンデマンド配信サービスで、多言語のコンテンツが簡単に見られるようになり、文化的グローバリゼーションが浸透している中で、カジュアルに語学を学びたい層が増えていることが成長の背景に挙げられます。また、急増するユーザーの多様なニーズを理解し、間違った翻訳を検知する仕組みとして機械学習を用いていることも特徴です。言語とAIは親和性が高い領域でもあるため、今後の発展に期待できます。…
「買った家具が部屋に合わないから返品したい」 こんな顧客の課題をオンラインで解決し、全米で傑出した売上を出し続けている企業について紹介します。Wayfairは2002年に創設され、インハウスのECサイト上で家具や付随するインテリアを販売する。売上はオンラインショッピングの領域ではアマゾンに追随するとも言える$6.779B(2018年)で、同社が2012年に上場した当時の売上の11倍以上です。この企業のウェブでは、購入したい商品と部屋のイメージを組み合わせてシミュレーションできます。「3D Room Planner」を使うと、オンライン上、気になる点を試すことができることが特徴です。 家具を購入するのは多くの場合、転居に伴う新しい部屋への設置や、既存のものからの買い替えがある。いずれの場合にも配置や、他の家具の色とのバランス感や、確認したいポイントは多いと思います。自分の部屋に似ている間取り・色合い、ベッドの大きさを設定し、売れ行き商品の、模様付きクッションを買うか、赤いクッションを買うか試したのち、赤いクッションは、自分が想定していたよりも小さいことがわかったので、大き目のクッションを探そうという選択が可能です。 また、インハウスで優秀なエンジニアを採用し、またAI技術者も研究に取り組んでおり、研究成果についての技術ブログを読む限りもはやテック企業のようになっていることも特徴です。…
アメリカでは、企業が必死になって採用活動をしているにもかかわらず、まだ仕事を見つけられない労働者も多くいるのが現状です。この理由の一つに、応募者を分類するソフトウェアの存在が挙げられます。 先日ハーバード・ビジネス・スクールより発表された研究によると、これらのシステムは1,000万人以上の労働者を書類の時点で除外しているという結果も出ています。そのため、企業ではこれまでのシステムでは見つけるのに苦労していた求職者と出会う仕組みを構築する動きが進んでいます。 例えば、Microsoftでは、自閉症スペクトラムの候補者を見つけるために新しい方法を導入しました。自閉症スペクトラムの候補者は、細部にまで気を配ることができ、問題解決能力にも優れていることが多いのですが、同社に限らず多くのスクリーニングや面接プロセスにはストレスが多く、自閉症スペクトラムの候補者には不向きであることがわかったといいます。 また、書類の時点で除外されてしまっていた労働者を狙うことを重視した企業のひとつにIBMが挙げられます。IBMでは2020年に300万件もの応募を受けていますが、同社は数年前、サイバーセキュリティやソフトウェア開発のポジションを埋めるのに苦労したことがあると言います。 そこで、人材の評価方法を見直し、米国内の職務の半分について大卒資格の要件を撤廃し、職務の真のニーズをより的確に捉えるために職務記述書を書き換えたといいます。IBMの最高人事責任者によると、それ以来、IBMではマイノリティの応募者が63%増加したといいます。…
シリコンバレーのトップアクセラレーターであるY Combinatorの今期バッチでは、人材育成、フェミテックなどのスタートアップが多く見受けられました。 中でも、ラテンアメリカに拠点を持つ会社に対して社員育成、リカレント教育を行うために必要なプラットフォームを提供するLernitという会社が興味深かったので紹介いたします。 CEO兼創業者のSantiago Maldonadoは、以下のようにインタビューで回答しています。 「大学を卒業したとき、最大の学習プラットフォームであるCourseraやUdemyなどのオンデマンドコースで学んだことと、実務で行うことの間には大きなギャップがあることに気づきました。 そして、このことこそ、企業が従業員に対して仕事で使える価値あるスキルを学ばせることができる、Lernitを設立する大きなチャンスだと考えました。」 このように、MOOCで教わるスキルと企業が必要としているスキルにギャップがあるという点に着目し、最近はEdTechや、HRTechの動きも、企業に対して売り込むプロダクトが増えていると感じています。これはリカレント教育というよりも、企業研修に近いものの方が市場も大きいと考える起業家が増えているのかもしれませんね。…
顧客とのやり取りのためのデータエンジンを最適化するマーケティングツールを開発しているアメリカのスタートアップのClearbitを紹介いたします。 GoogleやFacebook等のフリーモデルの台頭から、近年ではweb上でのプライバシーに重きを置くように行動が変化し、マーケティングツールも新しい時代へと突入しています。 消費者は、ブラウジング履歴や購入頻度など、オンライン上の多くの行動を隠しておくことができるようになりました。一方で、企業サイドは消費者へのマーケティングやその効果測定が困難な方向へと進んでいます。 Clearbitでは独自のアルゴリズムで顧客特性を深く理解し、将来の見通しやマーケティング、販売とのやり取りを最適化するのに役立つツールを提供しています。特徴の一つとして、データ保管の期限を30日間と定め、古くなったデータを蓄積しないことで、リアルタイムデータ収集を行っている点が挙げられます。 すでに1,500以上のクライアントが活用していることから、Clearbitデータの信頼性の高さがうかがえますね。…
教育現場のデジタル化が進むに伴い、新しい産業に注目が集まっています。その一つにオンライン監督官サービスを提供し、学生が自宅でテストを受けるのを監視する監視型企業が挙げられます。アメリカのアリゾナ州に本社を置くProctorioは、最先端の顔検出テクノロジーと多種多様な自動化ソフトウェアを備えたリモート監督プラットフォームを運営する企業です。 2020年には全世界で2,100万件の試験を監督したということで、コロナ以前の2019年の実績が600万だったことからすると、急増していることがわかります。 オンライン監督官サービスは、学生がカメラの視界から消えたり、答えがすり替えられるなどの疑わしい行動を検知したり、顔検出ソフトを使い目の動きや異常な動きをチェックしたりします。テキサス州のA&M大学では、秋のテストでカンニング疑惑が前年比50%も増加し、193人の学生が不正行為を自己申告し、軽い処分を受けたという事件がありました。ペンシルベニア大学でも、2019~20年度にカンニング事件の調査が71%増加したことが明らかになっています。 なお、生徒の不正行為ですが、オンライン監督官の目を免れるために画面から映らないところでドローンを使ったり、女生徒がくしゃみをして画面から消えたと思ったら別の男子生徒がかつらをかぶって代わりにテストを受けていたりなど、ユニークなものもあるそうです。いたちごっこのようですが、今後もリモート環境での生徒を監視するツールは幅広い機能拡充が求められていくでしょう。…
「Lyra Health」は、2015年にカリフォルニア州で設立された従業員向けの遠隔メンタルヘルスケアサービスを提供する企業です。Facebook(現Meta)にてCFOを務めていたDavid Ebersman氏が「人々が質の高いヘルスケアを迅速に見つけられるよう支援する」ことを目的に創業しました。 昨今のアメリカのメンタルヘルス危機は問題視されており、気分障害と自殺関連の結果の割合は驚異的な増加を示しています。新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、ソーシャルメディアの浸透や、インフレ、気候変動などの多くの問題は、特に若い世代の間で、うつ病や不安症状などの精神状態の異常と関連していると言います。 Lyra Healthが、National Allianceと共同で調査した世論調査によると、新型コロナのパンデミック初期の数か月間に、アメリカの労働者の80%がメンタルヘルスにまつわる問題を経験しているというデータも明らかになっています。 そんなLyra Healthは、メンタル不調を抱える企業の従業員と、セラピストやメンタルヘルスコーチなどをAIを用いてマッチングするデジタルプラットフォームを提供しています。 契約企業の従業員は、プラットフォームを通じて、気軽に1対1のビデオセッションや、認知行動療法をベースにしたチャットエクササイズ、進捗状況の定期的なモニタリング等を遠隔で受けることができます。Uberや、Zoom、モルガン・スタンレーなどの大手企業でも導入されています。 インフレや気候変動といった不安定な情勢が続く中で、精神状態の異常が今後も増えていくことは十分に考えられますので、低コストで活用できる遠隔メンタルヘルスケアサービスは引き続き盛り上がっていくかもしれないですね。 …
2016年に日本人の古賀CEOによって設立されたOishii Farmは、「世界最大の植物工場を作る」ことをゴールとして発足しました。収穫したイチゴの中で、最高品質のものを詰め合わせた「Omakase Berry」は、1パック8個入りで、50ドル(約6,700円)にて販売を始めました。非常に高価でありながら、マンハッタンやニューヨークのミシュラン掲載レストランから注文が殺到していると言います。 また、同社は先日、ジャージー市に74,000平方フィートの新しい農場を開設することを発表しました。この新しい施設の稼働によって「Omakase Berry」の価格は20ドルに減らされ、かつアメリカの大手高級スーパー「ホールフーズ」でも販売開始されるなど注目されています。 植物工場では、水と電力があれば外部の環境に左右されることなく通年で栽培を行うことができ、水も循環利用が可能で、農薬も不要。近年は、自然災害の深刻化で農業用地は年々減少しているという状況ですが、このような安定供給できる仕組みが広まると良いですね。…
Oxford VRは、2017年に英国オックスフォード大学の教授が中心となり設立されました。 これまで強迫性障害や高所恐怖症は、投薬やワークブックなどで治療されてきましたが、途中で治療をやめてしまうことが多いという問題がありました。そこで同社では、VR技術を用いて仮想空間をつくることで、手軽に成功体験を重ねて症状を軽減させるという手法を開発しました。 高所恐怖症の患者では、2時間ほどOxford VRの治療を受けただけで、症状が68%も軽くなったとい実績もあるといいます。また、同社では、VRを介して自動化された心理セラピーを提供する「gameChange VR(ゲームチェンジVR)」というプログラムを開発しています。このプログラムは、バーチャル上でコーチの助けを借りてユーザーを支援するもので、実際の人間は介在しないため、より多くの人が必要なサポートを受けることができます。 社会が不安定な状況が続き、メンタルヘルスサービスに対する需要が急増する一方で、今後どの業界でも人材不足が続く可能性が高いことを考えるとこのようなサービスは今後も普及していくことでしょう。…
楽しい休暇を過ごすために旅先での天気は誰もが気になるものだと思います。そんな天候に左右される旅行体験に「天候補償」という新しい形の保険を提供するスタートアップ「Sensible Weather」について紹介します。 Sensible Weatherは、2022年5月に1200万ドル(日本円で約16億円)を調達し、「Sunshine, Guaranteed(晴天を保証します)」というスローガンを掲げ、天候に左右される旅行体験を救うサービスを開始しました。 システムは非常にシンプルで、ユーザーはSensible Weatherのサービスを導入している会社から、部屋のアップグレードのような形で天候の保証を追加し、保険料を支払います。対象となる体験中に雨などの気象現象が発生すると予測された場合、たとえそのイベントがキャンセルにならなくとも自動的にその料金が返金されるというシステムです。保証の支払いは、体験が天候によって悪影響を受けた時間数に基づいて、ユーザーが請求することもなくすぐに処理されると言います。 予約のタイミングは、14日以内の予約には適用できないなど制限もありますが、このサービスが普及することによって、少し先の旅行の予定を予約する際、消費者は安心感を持ってサービスの予約が可能になります。悪天候で計画が妨げられた経験持つ方は多くいると思いますので、それを取り戻すオプションとして今後広がっていきそうですね。…
AIを活用したドキュメント検索ツールを開発するスタートアップHebbiaについて紹介したいと思います。 先日発表された、資金調達で3000万ドル(日本円で約43億円)を調達したと発表し、投資家の名前の中にはYahoo!のファウンダーでJerry Yang氏と、Uberの元AI研究責任者であるRaquel Urtasun氏の名前が連なっていたことで注目されています。 Hebbiaは、スタンフォード大学の博士課程の学生であるジョージ・シヴルカ氏と、スタンフォード大学のAI研究者、エンジニアの3人が設立したスタートアップで、創業当初はAI技術を応用して専門的なドメイン知識を理解するための検索ツール「Ctrl-F」を開発していました。 これはGoogle Chrome上のプラグインで、、Chromeの検索機能を、テキストのパターンマッチングを超えた自然言語処理でアップグレードし、ページ上の有益な情報を直接ハイライトしてくれるという機能でした。 今回、Hebbiaでは、AIを搭載した新しい検索エンジン「ニューラル」を発表しました。この検索エンジンは、PDFやパワーポイント、スプレッドシート、トランスクリプトなど、何十億もの文書を一度に調べ、「過去5年間にサプライチェーン業界で行われた最大の買収は?」といった難しい質問に対する答えを返すこともできる機能を備えていると言います。 このHebbiaの検索エンジンは、まだはじまったばかりですが、すでに金融系の企業の間で人気を集めているそうで、デューデリジェンスや投資パイプラインのステップなどに利用されているといい。今後も幅広い業界に浸透していきそうなツールですね。…
デジタル現金送金の提供を専門とする世界有数のNGOである「GiveDirectly」は、検索および広告会社の慈善部門であるGoogle.orgと協力して、緊急援助を対象とする新しい方法をテストしています。 具体的には、機械学習を使用して災害前後の衛星画像を分析し、建物の被害の深刻度を推定するGoogleのツールによって助けを必要としている地域に住む人を特定することで、資金が提供されます。 このシステムは9月にハリケーンイアンがフロリダを襲った際に米国内で初めて使用されました。嵐が去ってからたったの1週間後に、最悪の被害を受けた3つの郡を特定し、約3,500人の住民のスマートフォンに700ドル(約10万円)の現金支援を提供するプッシュ通知が届けられました。これまでに約900人がこのオファーを受け取り、そのうちの半分が支払われたといいます。 プライバシーの問題などもありますが、災害時のような非常事態に必要な支援を素早く届けられるシステムは非常に効果的ですので今後の浸透に期待したいですね。…
ウォルマートは、5,200万人のアクティブユーザーを誇る非ブロックチェーンのメタバースゲーム Roblox に、2つの新しいスペース「Walmart Land」と「Walmart’s Universe of Play 」を設置したと発表しました。このメタバースは、同社がバーチャルリアリティの世界へ展開するための実験場となるとのことです。 中でも「Walmart Land」は、音楽などのエンターテインメント、衣服や化粧品などのファッションをテーマにしたエリアです。10月からは「世界最高の音楽フェスティバル」にインスパイアされたというモーションキャプチャーでコンサートが楽しめる「Electric Fest」を開催するなど積極的にメタバースへの進出を続けています。 メタバースに新しい可能性を信じて投資をする企業はウォルマートだけではありません。音楽配信大手のSpotifyは、「Spotify Island」を立ち上げ、Roblox内で音楽ファンがほかのファンやアーティストと交流しつつ、音楽を楽しんだり、音楽を作ったり、仮想商品を交換する、といったことで楽しめるエリアになっているといいます。 また、米ディズニーも仮想世界の大規模な計画を明らかにし、「NFT、ブロックチェーン、メタバース、分散型金融、またはDeFiなどの新興技術を含む取引に取り組む」として、上級弁護士を募集しているなど、期待に対する熱量が高まっています。 …
この一年、DALLE•2や、Stable Diffusionといったテキストから画像生成をするジェネレーティブAIがあらゆる場所で話題となりました。 今回紹介するMovioは、GANのような機械学習フレームワークとともに生成AIを活用して、人間のアバターが話す動画を作成するスタートアップ企業です。このプラットフォームは、Canvaのようなドラッグ&ドロップ・インターフェースを使うマーケティング担当者をターゲットにしています。 ユーザーはまず、ショッピングサイトのテーマや日本旅行のテーマなど、さまざまなテンプレートを選択します。そして、AIで作られた超リアルなアバターを動画の「スポークスパーソン(代弁者)」として追加し、テキスト入力することで音声を生成することができます。AIで作られた人間の服装や顔、声はワンクリックで入れ替えることも可能です。 Movioのユーザー数は現在、数十万弱で、有料会員は1,000人に迫る勢いとのことで、これまでに約900万ドル(約12.5億円)の資金を調達したといいます。AI生成動画は、業界の中では小さなセグメントですが、画像生成AIの流行のように一気に拡大する可能性を秘めた領域です。 テキストから画像への変換で既に多くのユーザーが熱狂してきました。テキストから動画への変換が気軽にできることが実現すれば、ビジネス現場においてより多くの影響が出てくることでしょう。 …
Prisma Labsが開発した写真・動画編集アプリ「Lensa AI」は、自撮り画像からパーソナライズされた漫画のような画像を作成できる新機能「Magic Avatars」が話題になり、Apple とGoogleのアプリストアチャートで無料アプリの第1位を獲得するなど人気を集めています。 元Yandex(ロシアのインターネット最大手企業)のプロダクトマネージャーだった2人が共同設立した同社は、写真や動画を魅力的に加工できるAI編集ツールを開発しています。Lensa AIの編集機能は既存のソーシャルメディアの投稿をより面白くしたいインフルエンサー達に使用されています。8ドルでオリジナルアバターを作ることができる「Magic Avatars」の機能が話題となり、既に投資家からは750万ドル(約10億円)の資金を調達していることからもわかる通り、多くの類似アプリよりも有利な立場にあると言えるでしょう。 一方で、一部のユーザーからは、生成される画像の一部が過度に性的であるとの批判もあり、過去に話題となっては廃れていった数々のアプリのようにならないためにも、継続的にユーザーを惹きつけるための方法を模索する必要があることは間違いありません。生成AIのプロダクトは今後もさまざまなプレーヤーが出てくることが予想されますが、覇者となるアプリは生まれるのでしょうか。今後の動きに注目ですね。…
WSJの記事でコロナ禍において150万人近くもの母親が社会から遠のくことになったと報道されていました。弊社代表の石角も過去に連載でこの問題を取り上げていますが、依然として改善されない状況が続いています。 この問題を解決するために、女性、特に学童期の子供を持つ女性に特化したサービスを提供するスタートアップが数多く存在しています。今回紹介するThe Mom Projectは、職業的に優れた女性と世界的な企業を結びつけるデジタル人材マーケットプレイスや、求職者たちのためのコミュニティを運営しています。 創設者兼CEOであるアリソン・ロビンソンは「家族の時間とキャリアの両立」を普遍的な事実にしたいという想いから、2016年にシカゴを拠点としThe Mom Projectをスタートさせました。 The Mom Projectの特徴は、求職者は無料でプロフィールページを作成し、産休や育休後の復職に理解を示す2,000以上の企業の求人情報を見ることができます。 企業側も無料で求人を掲載し、150,000人を超える応募者の中からより企業のニーズに見合った人材を探すことができます。 2018年には、総額1,100万ドルもの資金調達をし、非常に注目を集めているサービスです。経営層に多様性が多いほどイノベーションが起きやすいことは周知の事実となっています。今後企業は働きたいと感じているママの社会復帰に向けた取り組みを見直し、改善することで更なる企業価値の向上につなげることが出来るでしょう。…
ジュエリーのサブスクリプションプラットフォームを運営するスタートアップ「rocksbox」が、ダイヤモンドジュエリーの世界最大の小売であるSignet Jewelersに買収されたことがでニュースになりました。同社はまだAIの活用を公言していませんが、似たモデルであるファッションサブスクリプションのパイオニア「Stitch Fix」はAIカンパニーとして非常に有名になっています。羽前Stitch Fixについて石角が書いた記事はこちらからどうぞ Stitch Fixは、服のレコメンデーションや物流システムの最適化、次に流行る洋服の予測と仕入れなど、ビジネスのあらゆる場面でデータを活用しています。顧客に送った洋服が受け入れられたのかを学習し、次回はより気に入ると思われるものを送付したり、似たようなプロファイルの人に対して、ある人が気に入ったものを送ったりもします。今回、Signet Jewelersが宝飾品レンタルへ進出した背景には、レンタル衣料品市場がパンデミックにより大きな打撃を受けた後に復活を遂げたことがあります。婚約指輪を買ったら次の購入まで何年もお客さんが帰ってこないハイエンドジュエリー市場の構造がコロナで見直されて、婚約指輪すらもレンタルされるなんて日がくるかもしれません。 高級商材である宝飾品が、レンタルサブスクリプションサービスという基盤を活かしたデータ活用でどう成長していくのか、注目です。…
Arenaは、2020年にニューヨークを拠点に設立されました。同社は予測アルゴリズムを活用して、今回の世界的なパンデミックのように企業が「不確実な環境」を切り抜けていくための戦略を策定するのに役立つプラットフォームを構築しています。AI技術を活用して経済状況をシミュレートし、何百万もの製品価格構成をテストして、企業にとって最適なモデルを提供します。Arenaを利用することで、価格設定だけでなく在庫管理などもシミュレートすることができるといいます。